JK_Tomorrow-Maker’s blog

ビジネスや経済などのニュースや日常の気づきを出発点に、「科学(技術)、心(アート)、モノ(サービス)、デザイン」という4象限を操りながら、自由に発想していきます。発想や着眼の手助けや、思考の自由度拡大の糧になれば、何よりです。

「消費増税、世論調査」から

f:id:JK_Tomorrow-Maker:20181204062722j:plain
----------
三点に注目したい 
 1.ストック×VAT
 2.消費と心理
 3.継続性のある策


関連代表記事 日本経済新聞 2018/11/26 朝刊
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO3816188025112018PE8000/
----------

A 消費税が10%に上がる。2018年11月23日~25日の区間で実施された日本経済新聞テレビ東京世論調査*1がある。部分抜粋する。

 

 Q1 安倍内閣を支持するか: する 51%/しない 38%
    支持する理由: 安定感 40%> 国際感覚 35%> 指導力 22%…
 Q3  安倍首相に期待する政策:
    社会保障 48%> 景気回復 41%> 教育 30%=外交・安全保障 30%…
 Q4 消費税率を10%を支持するか: 賛成 46%/反対 47%
 Q5 「プレミアム付き商品券」の導入を支持するか: 賛成 33%/反対 56%


 なお、Q5の「プレミアム商品券」は消費喚起を目的とし、住民税非課税世帯と2歳以下の子どもを持つ世帯が対象となっている。年代別にみると、39歳以下は賛成54%/反対38%である一方、40歳以上では反対が60%以上と強く、40歳代と50歳代の賛成が32%、60歳代と70歳以上の賛成が25%になっている。
 

 

B 大きな流れとして消費税増税については賛成と反対が拮抗しており、景気対策社会保障・教育などを安倍政権に望むという回答に対して大きな矛盾はない。一方、プレミアム商品券については平均で反対が賛成を大きく上回っている。プレミアム商品券の場合、対象が「住民税非課税世帯と2歳以下の子どもを持つ世帯」と限定されており、逆進性対策といっても不平等感を感じる消費者が多いということと推察される。或いは、過去の大して効果を奏さなかった「実感」経験のあるばら撒きと対比し、繰り返しても意味がないという反対なのかもしれない。


A 消費増税については賛成/反対、多くの意見があるが、私は反対である。別の記事( 

「消費税、増税」から - JK_Tomorrow-Maker’s blog )でも述べたが、私は、フロー税からストック税へと視線をずらす必要があると考える。また、消費ではなく、付加価値の創出側に視点をずらし、経済活動のステップに対して税を課す(VAT:付加価値税必用があると考えている。長期的には、ストック税×VATのコンビネーションで、シンプルかつ的確に対応する仕組みへの変化が必用である。それまでの検討・移行期間については、現状のシステム上で、対策をとる必要がある。

 

B 現状の消費税で考えるのであれば、私であれば「減税による増収」の方向性を検討する。増税による税収が上がると考えるのはあまりに単調である。1997年の消費増税の際には2.6兆円程度の税収が減ったともいわれる*2。2016年の際も自然増収にブレーキをかけたとも分析されている。また重要なのは、悲壮感というのか、日本の未来に対する(個々人の気持ちとしての)希望的側面が薄れていると実感できること。このような状況でのフローに対する増税は、財布の口を縫合する方向に、消費者の精神を向かわせる可能性が高い。


A 総務省及び金融広報中央委員会の統計データ*3,4,5を元にすると、平均貯蓄額が約1,800万円なのに対して、各年代層の平均貯蓄額と厚みは次のようになっている。

  ・70代以上 2,385万円 (内負債 120万円)  ×2,420万人
  ・60代   2,382万円 (内負債 205万円)  ×1,830万人
  ・50代   1,700万円 (内負債 620万円)  ×1,520万人
  ・40代   1,070万円 (内負債 1,055万円) ×1,870万人
  ・20,30代  600万円  (内負債 1,123万円) ×2,700万人

  急激に負債が減り貯蓄が増加する60代以降の世代が、人数的にも厚みを持っていることが一目でわかる。


B 単純に高齢者がため込んでいると責めることはできない。今の日本を形作るように努力してきた人生において、寿命の延びといた点も含め、当初の老後計画が大きくずれてきている。一方、自分の老後を責任もち面倒みてくれる信頼のおけるプレイヤーもいない。このような状況で自身のストックを切り崩し消費に回すとは、心理的に思えない。「目途」がついてきた段階で、ありあまった資産を消費に回すわけだが、それが、大胆な消費行動として顕在化してくることになる。高級列車の旅などいい事例である。中身を冷静に分析すれば、どうみても相当な割高である。

 

A 日本において消費を喚起しキャッシュを回転させる根源にあるのは、人間の心理的問題であると思われる。「消費したくなる」、「消費という選択が自然の」、「消費という選択に抵抗を産まない」…ような環境が重要であり、それは決して、増税であったり、駆け込み需要・逆進性対策では達成されない。別の記事( 

「国際博覧会、2025大阪誘致」から - JK_Tomorrow-Maker’s blog )でも述べたが、場当たり的なパルス的施策に頼ってはいけない。根源を治癒する必要があり、それは効果に継続性の現れる施策である。


B 心理面というのは蔑ろにされがち。極端な例では、我が国の総理が国民に向かって、どうどうと誠実に「我が国の未来は明るい」と公言するだけでも、流れは変わりうる。その上で、労働人口減少・高齢化という先進国の未来は、AI、IoT、ロボ…といったテクノロジーにより莫大な付加価値を創出するポテンシャルを秘めており、人口は減り高齢者がより増加しても日本は上向くというSTORYを構想し、それをビジョン化して国民に見せるとよい。次にやることは、生活の保障である。フローからストック×VATへと転換し、富裕層が資産の一部をキャッシュとして消費していくようにする。そして厚みがある高齢層については、老後生活を「保障」する。保障に対する交換条件は、資産の75%といった方式をとる。


A その場合、下剋上的なストーリー、即ち新しい勢力が今までの政権・歴史の非や嘘を全て認めたうえで、実行する方が効果は大きい。必須ではない。政府自体も電子化し国民直接投票の形式をとり、「ロジックの部分」も明快に見えるようにしていく。単なる利権追求や感情論はこれで排除されることとなる一方、国民全体の基礎的思考力がより重要になる。このような流れを構築できれば、日本は大きくかわる。そして何より、消費税だ〇〇税だ…還付だ、弱者保護だ…と、各論に引きずられ全体が見えなくなることはなくなる。

 

*1 世論調査データベース FC2 2018年11月23-25日 日本経済新聞テレビ東京世論調査 http://yoronpoll.blog.fc2.com/
*2  藤井 聡  プライマリー・バランス亡国論 2017/5/14 扶桑社
*3 総務省 家計調査 https://www.stat.go.jp/data/kakei/
*4 総務省 人口推計 www.stat.go.jp/data/jinsui/2016np/
*5 金融広報中央委員会 知るぽると https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/futari/2017/

 

「中国五つ星ホテル「モラル崩壊」」から

f:id:JK_Tomorrow-Maker:20181127200530j:plain

----------
三点に注目したい 
 1.信用の再創造(Fintech)
 2.CPM(信用のポートフォリオマトリックス
 3.個性のデザイン


関連代表記事 朝日新聞 2018年11月16日19時02分
https://www.asahi.com/articles/ASLCJ44J5LCJUHBI019.html
----------

A 中国5つ星ホテルに関し、微博(Weibo)を通じて、次のような真実が暴露・拡散された。即ち、ホテルの清掃スタッフが、客の使ったタオルで浴槽や便座、便器の裏、洗面台、床などを拭き、更には、同じタオルでコップやコーヒーカップまで拭いていた。また、別のスタッフは、客室のゴミ箱から使い捨て用のコップのふたを拾い、制服ので拭いた後、備え付けの場所に戻した。これらは一例であるが、「五つ星とは何か」と悩まされる。「中国」と付くことから、中国のモラル崩壊や人財倫理観の欠如、或いは格差社会労働人口不足を背景原因として指摘するケースも多いいが、「中国」に拘る必要なないだろう。これも偏見だろうか。中国にあるホテルを代表例に暴露された、と捉えるべきではないか。


B Fintechはロボアドであったり、仮想通貨であったり、新規海外送金システムであったり、キャッシュレスであったり…色々と注目されるが、その本質は「信用の再創造」 である。TechnologyにFinanceが相乗するわけだが、あらゆるモノゴトに信用を付与できることが革命的要素であり、現在進行しているFintechの具体例はそのほんの一部に過ぎない。即ち、時計の針を右に回転させた場合、現在とは一線を画すような「信用社会」が構築されると考えることが出来る。即ち、プロダクトやサービス、人物や企業、或いは関係性など対し信用が付与される。別の側面では、新しい保証社会が誕生するとも言える。


A 「五つ星ホテル」の「星」の意味は何か。高付加価値を維持しているアパレルブランド品は、なぜブランド化しているのか。高級老舗旅館やホテルに多額の宿泊料金を支払うのはなぜか。割高であっても「オーガニック」に惹かれ、財布のひもが緩むのはなぜか。実態としての機能はなくとも、エシカルサプライチェーンという言葉に反応し、割高な買い物をするのはなぜか。この背景には、信用が隠れている。しかし、その信用は、個人的な主観事実であり、或いは群としての主観的事実であり、客観的事実であることは稀である。


B 例えば、「星」。どのような評価系で星を付与するかというプロセスをしらないのに、「★★★★★」と並んでいると、優れている証しと思い込み、その施設やプロダクト・サービスを信用してしまう。例えば、「オーガニックです。真心こめて育てました。(+顔写真)」というPOP(Point of purchase advertising)があると、通常の棚に並んでいる野菜と比べて、健康的といった感を勝手に受けてしまう。例えば、「自社では人々が働きやすい製造環境を目指し改善活動に励んでいます」と公言している企業があると、製造環境がクリーンであるような気がしてくる。実際は、サプライチェーンの上段側で小さい子供が酷使されているかも、しれないのに。或いは、「国産」という言葉に、なんとなく安心感を覚えてしまう。…。


A Fintechとしての主ターゲットである「現在のお金という概念」はまさに信用を創造した好例であるが、今後はこの信用付与対象を急激に拡大できる。これは、テクノロジーの進化に依存しており、進化するテクノロジーベースで思考を出来るようになったことにも寄る。


B 現代風に言えば、第三者評価がわかりやすい。どのような判定フローをもっていて、どのようなタイミングで評価を行い、評価する者とされる者の関係性をどのようにコントロールしているのか…当面第三者機関による評価は、信用想像には重要な役割を果たす。今後の世界を考えた場合、あまりに属人的で重いプロセスがデジタルシステムに置き換えられ、より中立に、より客観的に、より迅速に、よりフレキシブルに評価が実施され、保証の概念が誕生し、信用が付与されることになる。単なるスペックではなく、プロダクトやサービスの背景や裏側、或いはサプライチェーン全体との関係性なども、適切な範囲で加味されることとなる。


A このようなデジタルでドライブされた信用付与社会においては、経営者としては、信用失墜を起こさない組織体を構築することと、他社とは異なるカテゴリの信用を獲得することが重要となる。ブランド論にも近いが、社会評判や顧客意見から「自社が評されていること」を抽出可能であり、その「評されていること」が現在の評価指標に入っていないのであれば、そこへの信用付与を申請するというフローが成立する。当然、PPM的に、CPM(信用のポートフォリオマトリックス)をデザインし、自社が獲得すべく信用の形をデザインし、それを実現するような戦略を描くこともできてくる。


B 信用社会や保証社会というと堅苦しいような気もしてくる。当然企業や製品だけでなく、その対象は、個人や関係性にも及ぶ。しかし、これは企業体や製品或いは個人の「個性」を客観的に定めながら、その個性にオリジナリティを付与するデザイン(作業)という自由度を残しているため、切り口を変えれば、何ら堅苦しくもなく、のびのびと羽ばたくことができるとわかる。外部環境として信用社会に急激に振れた場合、マインドセットの切り替えに遅れると、堅苦しくつまらない社会であると感じてしまうかもしない。

 

 

「ゴーストレストランの増加」から

f:id:JK_Tomorrow-Maker:20181127201313j:plain

----------
三点に注目したい 
 1.事業構造的な競争力
 2.プラットフォーマとコミュニティ要素
 3.地方人気店の拡大戦略


関連代表記事 Forbes  2018/11/21 11:00
https://forbesjapan.com/articles/detail/23903
----------

A テクノロジーの進化により戦略自由度が広がった好例である。日本ではまだ「ゴーストレストラン」という呼称に馴染はないが、ECの勢いが止まらず、シェアリングやデジタル進化系物流の進歩が目覚ましい現状を踏まえれば、この先の未来では当然の仕組としてインストールされても、何らおかしくはない。

 

B ゴーストレストランという呼称の意味するのは「顧客(人)がいない」という部分に基礎を置くのだろう。一般的飲食店は、その商圏を考え、人(顧客)が店舗にやってくることに基づく収益をメインに据えるが、ゴーストレストランでは「顧客はやってこない」=「料理を顧客に届ける」ことを前提にする。単なるデリバリーと混同されがちだが、「顧客が来ない」という前提を基礎にすることで、出店エリアの自由度が大きくなり固定費を大きくそぎ落とすことが出来る。また接客側のオペレーション要素がなくなるため、設備や建屋・内装に対する投資のあり方も変化し、生産性が大きく上がる。さらに言えば、スモールスタート/スモールテストを実行しやすくなり、ヒットを生み出せる確率があがるだろう。

 

A 固定費に対する限界利益の貢献度合を最大化するのは経営の重要な要素であるが、この指標(固定費/限界利益)に対するデザイン性や考え方も従来飲食業とは大きく異なってくる。また、商圏の考え方も大きく異なる。単純に考えても顧客が足を運ぶ商圏の広さと、顧客のもとに料理を届ける広さは大きくことなり、テクノロジー進歩による物流プラットフォームが整備されればされるほど、そのゴーストレストランとしての商圏は拡大し、規模×確率の議論へと落とせるようになるので、固定費に対する限界利益の貢献性も改善できる。


B 視座を上げれば、ゴーストレストランを束ねるプラットフォーマという立場は、大きな戦略自由度をもち、顧客に対してバライエティ豊かなサービスを提供できるだろう。ゴーストレストランを束ねるというのは、ゴーストレストラン(以下、GR)のコミュニティを形成するということである。例えば、GRーA~GR-Jまでそろえた時に、GR-A~GR-Jをそれぞれ専門化させ、1つのプラットフォーム上ではGR名称を省いて全メニューを任意に選択可能にする。GR-Aからはサラダ、GR-Dからはカルパッチョ、GR-Fからは釜飯、GR-Jからはピッツァという選択をし時間を指定すれば、それがワンセットで届く。

 

A コミュニティ要素は非常に面白く、GR同士のコラボを誘発させることもできる。特にプラットフォームとして顧客の意見や気持ちを吸い上げ、それを叶える確率の高いGRの組み合わせを導出し、GR-A+GR-Gで所定テーマの新メニューを互いの専門性をフルに活かして開発することが出来る。完成したメニューは共に扱ってもいいし、GR-A側だけに委ねたっていい。売上配分を設計しておけば問題はない。これらは学習可能である。

 

B GRコミュニティ要素を考えれば、会員制にして会費を徴収し、CCC(Cash Conversion Cycle)を大きく落とすモデルを構築し、部分的にリアルの場を設けて、試食会であったり、XXと料理を堪能する会のような場を提供していくことも考えられる。


A このようなGRプラットフォームを考えた場合、例えば、場所を貸し出しているプラットフォームであったり、企画・準備を請け負うクラウドサービスなどと連結させ、エコシステムを広く深くするとよいだろう。例えば、ちょっとした昼食会やパーティなどを、素敵に簡単に実行できるようにもなる。また、既存の飲食店が参画するプラットフォームと連結させて、ゴーストレストランコミュニティで人気を博しているメニューを、既存の飲食店で提供できる権利を付与するという方法も考えられる。料理を素敵な空間で食したい要求は存在するため、そこは既存店舗に委ねていく。


B 可能性は無限にあり、機会の窓は大きく開きかけているフェーズではないだろうか。地方で大人気の店というのが取り上げられることが多いが、これが同じ事業構造で多店舗展開すると失敗するケースは多い。この場合に、地方で大人気のパン屋やイタメシ屋が、2号店以降はゴーストレストランとして出店していくのは非常に面白い。逆に言うと、地方で人気の店舗をゴーストレストランとして束ねるプラットフォーマになるという選択肢もあるだろう。繰り返しになるが、可能性は無限大であり、機会の窓が大きく開きかけているように思う。

 

 

「タケダ、シャイヤー買収承認」から

f:id:JK_Tomorrow-Maker:20181127195415j:plain

--------------------
三点に注目したい
  1.組織体としての変貌
  2.巨額買収の必然性
  3.真のグローバル化


関連代表記事 朝日新聞 2018年11月21日10時57分https://www.asahi.com/articles/ASLCP33THLCPULFA004.html
----------

A 「巨額買収せざるをえない」状況であり、クリストフ・ウェバーCEOとしては見事な成果へと突き進んでいる状況。最大の問題は、今後の、真のグローバル企業への転身であり、組織体のあり方を転換できるかいなかだろう。

B 武田薬品工業は買収によりグローバル企業へと転身しようと努力を重ねてきた。長谷川さん時代に、(米・バイオ医薬)ミレニアム・ファーマシューティカルズを8,900億円で買収(2008年)。(スイス・製薬会社)ナイコメッドを1兆1,000億円投じて傘下におさめた(2011年)*1。特に1兆円をかけたナノコメッドの買収では、単に新薬獲得という目的で終わらせずに、ナノコメッドのロシア、東欧、或いは中南米に強い営業・販売力を原資に、新興国市場の開拓を志すものであった。

A 文字に起こすと「買収による企業成長(拡大)」となる。しかし、無借金経営を貫いてきた研究開発系企業が、レバレッジをかけて新たな新興市場の開拓に乗り出すというのは、言葉でいうほどやさしいものではなく、企業文化や感情論との闘いを乗り越えた末でのアクションとなる。即ち、「変わらねばならない」という強い危機感とドライブしきるという気概がそこにあったと推察される。

B (英)グラクソ・スミスクラインのクリストフ・ウェバーを次期CEOに指名した際も、外資乗っ取りという個人的な、そして群としての感情的反発に遭遇したことは想像にたやすい。客観的な経営トップとしての資質とは別に、「従来のタケダ」という心的側面がつよく現れ、「組織が瓦解する」「らしさがなくなる」「外資の乗っ取り」…と変化を嫌う言葉が羅列されたことだろう。それを乗り越えクリストフ・ウェバーCEOが誕生した段階で、武田薬品工業は真のグローバル企業への道を歩み始めたこととなり、それは即ち、世界で戦えるメガファーマの仲間に入る道を歩みはじめたということである。

A タケダのシャイアー買収については、反対意見も多い。小が大を飲み込む買収。説明不十分。株価下落。武田薬品の将来を考える会の結成…。しかし、グローバルには兆単位の巨額買収が続いておりメガファーマが規模を拡大し、経営を効率化し、利益を創出している状況である。国内から海外にはばたき、また、AIやデジタルプラットフォームといったテクノロジー変化を踏まえれば、MRスペックでの勝負に依存することはできなくなる。還元すれば、薬としての力そのもの、が強い競争要素になる。さすれば、メガファーマになるか、メガファーマに買われるか、カテゴリーキラーの道を歩むか…と、選択できる未来が絞られてくる。タケダというブランドとクリストフ・ウェバーCEOの使命を考えれば、メガファーマに変貌するという道を選択するのは、いわば必然である。

B 買収後の状態を単純合計すると、2017年値でシャイアー+タケダ連合はグローバルランク8位*2になる。7兆円買収を行っても世界8位であり、トップ1-3の64%~69%の規模でしかない。またグローバルメガファーマは利益率で20~30%を誇るが、タケダは営業利益率で10%強、純利益率で9%程度である*1。シャイアーの純利益率が28.2%であることから、買収により利益率が押し上げられる*3。この押し上げられる利益率を更に上げ、タケダへも仕組として反映させ維持できるかどうかが重要である。

 1.ファイザー/アメリカ 453億ドル
 2.ノバルティス/スイス 419億ドル
 3.ロシュ/スイス 417 億ドル
 4.メルク/アメリカ 354億ドル
 5.J&J/アメリカ 344億ドル
 6.サノフィ/フランス 341 億ドル
 7.グラクソ・スミスクライン/イギリス 287億ドル
 8.シャイアー+タケダ 280億ドル
 9.アッヴィ/アメリカ 277億ドル
 10.ギリアド・サイエンシズ/アメリカ 257億ドル


A タケダによるシャイアー買収の目的としては、「消化器系疾患領域、ニューロサイエンス(神経精神疾患)領域、オンコロジー領域、希少疾患領域および血症分画製剤におけるリーディングカンパニーとなるため」と強調されている。例えばシャイアーは、ハンター病など希少疾患向けの製品や「パイプライン」を多く揃えていたり、2016年にはバクスアルタを買収し、血友病治療薬の分野でも世界有数の企業となっている。単純には買収により、新薬創出・ポートフォリオに対し、パイプラインを太くそして長くできる。そして重点領域であるがん、消化器、神経精神の3領域に、希少疾患という4番目の柱を加えることになる。


B 重要なことは、確かにシャイアーは、現在12兆円程度の規模で数年後には20兆円以上に伸びるとされる競争性の低い希少疾患薬市場において、希少疾患のバイオ薬で世界のトップに位置する企業であるが、シャイアー自身が小さい買収を重ねに重ね成長してきた企業であるということだろう。そして、タックスヘイブンで有名なアイルランドにその本拠地を構えている*3。アイルランドといえば法人税率が12.5%と低く、4E(EU加盟国・English使用国・Ease of business・Education)の四拍子が揃った地であり、多くの一流企業誘致に成功している土地である。法人税の対GDP比をみれば周辺EU国とそん色ないことが確認できることから、妥当な法人税率の設定で国民への企業貢献も適っていると考えることができる。

 

A タケダは「TAKEDA」として一丸となり、いわば「群」として組織活動を行い、日本の医薬を牽引してきた。一方のシャイアーは、グローバルに小型買収を重ねて適材適所の思想でフレキシブルにスピーディに動いてきた*3。組織文化・風習・仕組が大きく異なるのは想像にたやすい。買収による合算規模の効果を最低でも維持し、M&Aとして分母を削り分子を和の数十%増にするには、PMIが成否を握る。このPMIは買収後統合作業であり統合前から練り上げ統合後数か月で一気につめ実行すべきものだが、本ケースでは、タケダとしての組織としてのあり方や人財スペックの再定義、或いは人財思考レベルの再教育なども長期的に必要となる。言ってしまえば、タケダは組織の雰囲気や色、文化に風習…全てをグローバル化できなければ失敗する。グローバル前提での外国人幹部を増加させ、社内人財のマインドを変えることができるかどうか。中途半端に日本色を残そうとはしない方がよい。

 

 

*1 TAKEDA 創業からの歩み https://www.takeda.com/jp/who-we-are/company-information/history/
*2 Pharmaceutical Executive/ Pharm Exec's Top 50 Companies 2018     www.pharmexec.com/pharm-execs-top-50-companies-2018
*3 Shire https://www.shire.co.jp/who-we-are/our-story/our-history

「華為製品の不使用を要求」から

f:id:JK_Tomorrow-Maker:20181127193841j:plain

----------
三点に注目したい 
 1.エコシステムというバッファー
 2.中国企業の直面する呪縛
 3.通信インフラ


関連代表記事 Bloomberg 2018年11月23日 13:50 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-23/PIMM2G6S972801
----------

A 米中貿易問題の本質は次世代安全保障の覇権争いにあると考える。この見方をした場合、デジタルテクノロジー革新で安全保障のあり方が大きく変わっているこの時代において、米中貿易戦争というのは、中国に覇権を握らせないための一手段として位置づけられる。次世代の安全保障覇権を考えた場合、重要因子の1つはハイテク覇権である。であれば、ハイテク企業が中国から飛翔しグローバルに支配度を増すのは、安全保障上の重大リスクといえる。

 

B 米中間で直接的に関税攻撃をしあう分には、世界的に迷惑がかかろうが、二国間のやり取りとして解釈できる。これは、華為技術スマホやZTEのドローンといった私的企業に対する攻撃でも同じである。政府として私企業を攻撃するのはどうかとも思うが、中国とアメリカという二国間で安全保障を考えた場合に、そこに大きなリスクがあるという理由で、アメリカ国内での所定企業の製品使用に制限をかけるのは、理に適ってはいる。


A 問題なのは、グローバルという視座を加えた場合である。例えば、アメリカから日本やドイツ、或いはインドに対して、「中国品に輸入関税を設けるように」とか、「中国企業Xの製品を購入しないように」と指示を出すのは、お門違いである。仮にこのような指令をだしたとしても、通常であれば、どの国も言うことは聞かない。


B 華為技術スマホのシェアでサムスンに次ぎグローバル2位、通信インフラ(基地局)部門では2017年にグローバルシェア27.9%でエリクソンを抜いたと報告されている*1。同年の連結売上高は6036億2100万元(約10兆4300億円/前年比116%)であり、純利益として474億5500万元(約8200億円)を生み出している*2。売上を地域別にみると、中国が約50%、EMEA(欧州、中東、アフリカ)が27%、アジア太平洋が12.3%、南北アメリカが6.5%である。また事業別にみると、通信事業者向けネットワーク事業が49.3%、コンシューマー向け端末事業が39.3%、法人向けICTソリューション事業が9.1%である*3。アメリカ依存形態はとっていない。


A アメリカからみて華為技術のようなハイテク企業がグローバルなリーダーシップを発揮するのは、安全保障的にNGである。特に、5Gが急激に開花するこのフェーズで、通信インフラ事業としてグローバルに支配度をもつ企業は脅威である。ここで面白いのは、中国という「ブランド」である。中国からのサイバーテロや盗聴といった情報はその真偽はわからぬも、無数に存在している。また、これらの情報と一般的な中国のイメージとの乖離は小さい、と感じる人々が多数ではないだろうか。つまり、華為のようなグローバルな通信インフラ事業社が、「中国の意思」を組んだ場合、それはグローバルレベルでの安全保障問題に発展すると「言える」。そして、米軍基地や駐屯地のある国においては、安全保障程度が脆弱化すると「主張できる」ことになる。この場合、二国間を通り越し、アメリカからドイツや日本などに向けて「華為製品を控えるように」と指示を出したとしても、一本の筋は通っており、無下に否定することもできなくなる。


B 冷静に考えれば、アメリカだってあらゆるデータを「盗み見」しているわけであるが、自国が行う安全保障という立場での主張であれば、それは何ら問題にはならない。華為の実績はすさまじい。純粋に現国防としての危機感もあるのだろうが、将来の安全保障覇権獲りという視点で華為を潰したくなるのも、気持ちとしては理解ができる。

 (2017年度の華為の活躍*3)
  ・世界に50万以上のNB-IoT基地局を展開。
  ・商用ネットワークで1,000万以上の接続を実現。
  ・1,000社以上のパートナーとともにNB-IoTエコシステムを構築。
  ・NFVで350以上、SDNで380以上の商用契約を締結。
  ・30以上の商用ネットワーク上で無線インターフェースにCloudAIRを展開。
  ・世界30社超の通信事業者と10以上の都市で5Gプレ商用化トライアルを実施。


A 華為はアメリカ依存しておらず、エコシステムの深耕をしっかりと行っており、よい経営をしている。広く深いエコシステムは外乱を吸収するバッファーとしての機能を果たし、安定な企業経営に大きく貢献する。今回のような国家的攻撃であったり、競合企業の攻撃なども、緩和しやすい性質を持つ。華為としては、ESG的な社会との深いコミュニケーションだけでなく、ENABLER(イネーブラー)としての役割に徹し、オープン協業に尽力する姿勢を採っている。また360以上の標準化団体、業界アライアンス、オープンソースコミュニティに参加し、IIC、IEEE-SA、BBF、ETSI、TMF、WFAなど300を超える要職に就任している*3。このような活動を通じ時間をかけて構築したエコシステムは、高い結合エネルギーで互いに結びつきながらも、総体としてはフレキシブルに変形しうる。


B 華為としては中国企業である以上、今回のような攻撃や「中国だから」という呪縛からは逃れられない。これを本質的に変えるには、中国という国家がグローバルに変貌しリブランディングを達成するか、脱中国企業の道を歩むことになる。一方、経営として、多くのそして鋭い外乱を吸収し「気にしない」という姿勢をとれる状態を作り上げることも重要であり、そのためには、総体としてはフレキシブルに変形できる高い結合エネルギーでネットワーク化したエコシステムの形成に、いま以上に誠心誠意邁進する必要がある。そして、これらのエコシステムの弱点は「裏切り」であることを常に肝に銘じる必要がある。公明正大な態度で、エコシステム全体の健全性をリーダーシップを発揮し、つくっていく気概が重要である。


*1 日本経済新聞 主要商品・サービスシェア調査
  https://www.nikkei.com/article/DGKKZO19152230S7A720C1EA5000/

*2 HUAWEI https://www.huawei.com/jp/
*3 HUAWEI ANNUAL REPORT https://www.huawei.com/jp/

「自動運転車タクシー、米で始動」から

f:id:JK_Tomorrow-Maker:20181127183539j:plain

----------
三点に注目したい 
 1.不確実性の捕捉
 2.人の社会行動の変容
 3.既成事実


関連代表記事 自動運転ラボ 2018年11月15日 08:11
https://jidounten-lab.com/w-google-autonomous-taxi-201812
----------

A アルファベット傘下のウェイモが、2018年内に米国アリゾナ州において、完全無人配車(タクシー)のオンデマンドサービスを開始するとのこと。MaaS(Mobility as a service)と呼ばれて久しいが、このウェイモの進歩はMaaSの本格的幕開けに位置するのかと思う。


B ウェイモのアプローチには秀逸な点が複数ある。まずは、Google時代からだが、ワシントン州カリフォルニア州アリゾナ州テキサス州ジョージア州…と公道無人運転の実績を確実に積み上げ、累計1,000万マイルを走行していること。そして、アリゾナ州フェニックスという「許された土地」をフル活用し、通学、通勤、或いは買い物等の日常生活の足として、一般ユーザに自動運転車を利用してもらう商用テストを開始してきたこと。そして、2018年1月には、完全無人でのテストも開始していること。このような本当の利用状況を踏まえた実績を着実に構築しているのは、長期的ビジョンを持つフットワークの軽いチャレンジングな組織体としての特徴が、もろに出た結果であろう。


A フェニックスでのテスト走行には、400名ものユーザが参加している。導入車両は600台に及び、直近では100万マイルをわずか1カ月で達成している。驚異的なペースであり、サービス開始と共にこのペースはさらに上がると推察される。面白いのは、ウェイモが約8万台の自動車を発注したということだろう。2018年3月に、フィアット・クライスラーのパシフィカを6.2万台、ジャガー・ランドローバーのIペースを2万台購入する契約を、 今後約2年間で結んでいる。現状の投入台数である600台が133倍に増加する未来であり、ユーザ利用ペースが一定であれば、数か月で1.33憶マイルを走行する規模感となる。


B  重要なことは、ウェイモの躍進がリアル実証に局在していない点である。リアルとサイバーを見事に相乗させている。即ち、公道実証の700倍ものsimulation(バーチャル空間で自動運転simulation)を入念に行っており、現実世界での危険やアクシデントへの対応力を飛躍的に高めてる。これとリアル情報とが相乗し、完成度が飛躍的に上がっている。そして、今後の8万台投入という可能性と数か月で1憶マイルを超える走行距離を考えれば、不確実性への対応能力も身に付くこととなる。即ち、現時点ではリスク算定困難な不確実事象にリアル世界で遭遇する「機会(チャンス)」が巡ってくることとなり、それを核に、サイバー空間でのsimulationを更に進め、リアル世界での安全性・利便性へと反映可能になる。


A 自動運転という未来を考えた時に、最もケアすべき事項は、人間運転/自動運転の混同期間への対処である。自動化へと振り切った未来を構想し、それを実現するための戦略を構築し、パーツを1つ1つ揃えていくわけだが、これらが統合し1つの形として結実するかどうかに強いゆさぶりをかけるのが、自動運転と人間運転の混同期間のトラブルである。


B 自動運転車に、道交法のような社会ルールを逸脱するような指令を出すわけにはいかない。人間運転車が50~60km/hで通行する道路を、法定速度30km/hを上限に走行する自動運転車を想像してみてほしい。自分が車を運転していたら邪魔で仕方がないし、通行人であれば「(遅いから)まだ道路を横断出来る」と判断するかもしれない。或いは、自動タクシーであれば、停止線ごとに律儀に数秒間も停止しノロノロと走るタクシーに乗客として苛立つのではないだろうか。


A 自動運転用の専用レーンに自動運転用法定速度を新たに設定したり…といった策はいくらでもあるが、注意しておきたいのは、人間の順応である。自動運転の本質は、自動車という箱がサービスに変貌するという側面とは別に、「人間の社会行動を変容」させることにある。これが本質であり、未来の利益の源泉である。


B ウェイモの発注した8万台という車両を自動配車として公道に解き放つことで、自動配車を利用するユーザの心情は勿論、一般自動車のドライバー(の心情)との関係や、通行人(の心情)との関係を捕捉すべきである。人間の行動変容、言ってしまえば自動運転・自動配車という新しい事象に対する人間の適合性・慣れを、社会データとして採ることができる。これは、自動運転世界における重要な基礎データとなる。


A アリゾナのように「新しいこと(従来規制・ルールにはないこと)については、やってみて、問題点を炙り出し、それにルールをつける」という姿勢のある地域は、アメリカには比較的多いし、既成事実が出来ることで、このような地域がよりいっそう増えることは想像に容易い。一般住民からの圧力(要望)もかかるだろう。このような観点に立つと、アメリカのような文化的側面・地方裁量権、あるいは中国のような独裁体制が、新しいテクノロジーに対してどれだけ有利なのかを実感できる。


B ウェイモとしてはどのような戦略をとるのだろうか。ウェイモとしては、Fireflyを扱っていたが、これの開発及び生産を打ち切り、フィアットクライスラーのミニバン車をベースにした仕組に移行した経緯がある。機体としての個性、即ち、質、肌ざわり、香り、遮光性、ディスプレイ、机、BGM、ネット環境…といった乗り心地や内装などを車製造専門家に任せ、自身はMaaSとしての基本情報を吸い上げ、機体設計へとフィードバックしていく。このやり方はウェイモとしては重要であり、このプラットフォームにJAGUARFCA以外のプレイヤーも乗せることが重要になってくる。自動車、部品、サービス…とアライアンスを広げ深めエコシステムとして醸成することが、重要となる。MaaSとして社会変容情報やサービス自体に紐づく情報は正の循環を形成しやすく、先行者としての優位性が成立しやすい。


A ウェイモの自動配車・タクシーサービスに対する不満やそれを通じて実現して欲しいことをオープンにして、常に先端を維持し、消費者をつかみ、MaaSとしてのエコシステムを成熟させていく方法もある。一つの転換点は、国を跨ぐタイミングであろう。この際に、その国に強いどの企業とタッグを組むのかが、UBERが中国から排他されたような未来を作るのか、侵略を成功させるのかをわけることとなる。

 

 

「インド地下鉄網 急拡大」から

f:id:JK_Tomorrow-Maker:20181126195911j:plain

------------------

三点に注目したい

  1.インド魅力全体像

  2.商習慣・文化の壁

  3.モディノミクス要件

 

関連代表記事 日本経済新聞 2018/11/14 朝刊https://www.nikkei.com/article/DGKKZO37700440T11C18A1FFJ000/

----------

A インド首都を走るデリー・メトロの営業距離が314km。これは東京を超えている。そして、年内にも世界4位のニューヨークと肩を並べるとのこと。急成長遂げるインドの地において、大課題である環境や交通問題に手を打ちながら戦略的外資呼び込みを実現し続けるためにも、鉄道・周辺開発は重要である。相当な規模の円借款事業が入り込んでいるのは見逃せない。直近でも2018年10月29日に、JICA/インド政府間で総額2,469億4,200万円を限度としたLoan Agreement(円借款貸付契約)が結ばれている*1。

 

  (1) ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道建設事業(第二期)(1,500億円)

  (2) ウミアム・ウムトゥル第3水力発電所改修事業(54億9,700万円)

  (3) デリー高速輸送システム建設事業フェーズ3 (III)(536億7,500万円)

  (4) 北東州道路網連結性改善事業(フェーズ3)(第一期)(254億8,300万円)

  (5) トリプラ州持続的水源林管理事業(122億8,700万円)

 

 その7か月前である2018年3月29日は、総額1,878億8,400万円を限度とする円借款貸付契約が結ばれている*2。

 (1) ムンバイメトロ3号線建設事業(第二期)(1,000億円)

 (2) チェンナイ海水淡水化施設建設事業(第一期)(300億円) 

 (3) ヒマーチャル・プラデシュ州森林生態系保全等(111億3,600万円)

 (4) チェンナイ都市圏高度道路交通システム整備事業(80億8,200万円)

 (5) 北東州道路網連結性改善事業(フェーズ2)(386億6,600万円)

 


B インドの成長性は無視できず、日本とインドとの「相性」も好適であって、更に未来のアフリカ進出を企んだ場合にも、「インドの力(印橋)」は重要になる。インドについては、現状を理解しておいて損はないし、経営者として、インド進出機会はしっかりと探る必要がある。まず、魅力あるインドが「日本好き」であることが重要である*3。


 ◆関心のある取得したい言語 日本語

 (有識者50%、一般39%、平均48%、ランク1)

 ◆信頼できる国

  日本(有識者46%、一般44%、平均46%、ランク1)

  アメリカ(有識者14%、一般16%、平均14%、ランク-)

  ロシア(有識者24%、一般21%、平均23%、ランク2)

 ◆重要なパートナー

  日本(有識者87%、一般85%、平均87%、ランク1)

  アメリカ(有識者68%、一般75%、平均70%、ランク2)

  ロシア(有識者69%、一般63%、平均67%、ランク3)

 


A 経営として考えれば未来から現在の打ち手を考えるべき。BloombergのインドのGDP推移(予想)をみると、2017年には世界7位であるが、2027年にはアメリカ・中国に次ぐ3位に浮上すると予想されている。現状としては、名目GDPやフォーチュングローバル500社企業数などが中国の足元にも及ばない状況*4であり、即ち、今後の指数的成長が期待されている状況である。歴史的には、ガンジー…バジパイ政権と移行し、マンモハン・シン政権の際に1人あたりGDPが上方転換を開始し、2012年や2013年頃の停滞を契機に、モディ政権に移行し、海外直接投資の増加なども合わせながら高い経済成長性を維持している状況でる*5。


B 成長期待が高く日本との親和性も高いインド市場を、無視するわけにはいかないだろう。特にモディ政権に移行してからは、未来を「簡単にわかりやすく表現」しており、方向性を把握しやすい。それはモディノミクスとも呼ばれ、例えば次の6つが挙げられる。

 1)メーク・イン・インディア

 2)デジタル・インディア 

 3)スタートアップ・インディア

 4)クリーン・インディア

 5)スキル・インディア

 6)スマートシティ構想(100都市)

 

A 日本としては、円借款を利用したインフラ整備のみならず、スズキのようにインドに根を張る事業をより進めるべきである。注意が必要なのは、成長見込みが高く親和性が高いから成功するとは言えないこと。インドで事業を安定開花させるには、その商習慣や風習から、20年程度程度のスパンがかかるものと覚悟する必要がある。モディノミクスの税制改革GST、デジタルインディア、スマートシティ構想、クリーンインディアなど…どれも重要であるが、メーク・イン・インディアについては、日本の旧来型製造業が再び飛翔する契機になる可能性も高い。


B メーク・イン・インディアとしては、2025年までにインドでのモノづくりを、GDP占有率で25%にまで高めることを狙っている。現状が16%程度であり、急激な経済成長があることを考えれば、インドでのモノづくりへの進出は、モノづくり企業としてはスコープしておきたい。特に重要産業が25個絞られており、ここに該当するのでればなおさらである*6。

 (一例) 自動車、自動車部品、航空、バイオ、化学、建設、防衛、電子機器、IT/BPO、皮革、石油、医薬品、港湾・海運、鉄道、再生可能エネルギー、道路・高速道路…。


A モノづくり企業がインドに展開する場合、デジタル化はほぼ前提となる。この時に、インドパートナの力をフル活用できるわけだが、「デジタル化の方法」については吟味が必要である。例えば、製造をデジタル化しデジタルファクトリにする場合、従来構築してきたQCフローなどが役立つわけだが、何でもかんでもデジタル数値にして対等な扱いをすればいいというわけではない。どの数値をひっぱり管理すべきなのか、科学的洞察に基づいてピックアップしていかないと、オートメーション化されたときに、何を管理しているかがわからなくなる。同様に、IoTなどで引き出す変数設定もそうであるし、情報ごとの管理フェーズ設定なども重要になる。

 

B 鉄道網が整備されるということは、経済活動のフィールドが変化するということである。推進しているEVとの「コネクト」の観点も当然無視できない。外資誘致で競っている洲ごとの戦略も変わってくるし、インド入りする企業の集積場所も当然変わってくる。これらを総合的に捉えた場合、企業の経済活動を連結させる基盤であったり、EVと鉄道を総合的に扱うモビリティプラットフォームなども続々と誕生すると考えるのが自然だろう。この延長で、スズキが代理店・修理工場をち密配置し勝利への一手としたように、EVなどの修理工場も続々と誕生するだろうし、クリーンインディアと合わせてそれらの修理工場やステーションへのトイレ整備も進むかもしれない

 

A インドの未来は、モディノミクスの明確な要件から構想し、それらを連結させることもできる。そのような世界観をインド企業と共に作ることが重要。包括的な思考の中からXX製造などに乗り出し、自らエコシステムを拡大させ深みを与えるように汗を流す必要がある。

 

B インドについては、中長期的に戦略を立てるべき。繰り返しになるが、インドで事業を安定開花させるには、その商習慣や風習から、20年程度程度のスパンがかかるものと覚悟する必要がある。つまり、「中長期的戦略で2030年に立ち上げたい」というのであれば、机上調査は早々に終わらし、現地に飛び込みネットワークを信頼関係を構築しエコシステムを作り上げる努力を早々に始めないといけない。そして、中長期的戦略であり、戦略的赤字を継続的に発生させるものとして堂々と構えることも、場合によっては必要になってくる。

 

A 中途半端では無理である。現地出向組をしっかりと組成し、権限を委譲。本社議決案件でも現地との連絡をスムーズにし、スピーディにこなせるようにしておく。2年1回くらいでの入れ替えも戦略的に行い、戻ってきた社員の居場所は事前に準備しておく。インド進出を企み続けていては、いつまでたっても芽は出ない。身を投じる大胆さが、ここでは勝利への一手になる。

 


*1 JICA インド向け円借款貸付契約の調印:新幹線をはじめとした様々な分野での協力を通じて、環境と調和するインドの成長に貢献     https://www.jica.go.jp/press/2018/20181030_01.html
*2 JICA インド向け円借款貸付契約の調印:様々な分野での協力を通じて、インドの包摂的かつ持続的な発展に貢献     https://www.jica.go.jp/press/2017/2018_0330_01.html
*3 外務省南西アジア課  インドにおける対日世論調査     https://www.in.emb-japan.go.jp/files/000211862.pdf
*4 IMF World Economic Outlook       https://www.imf.org/en/Publications/WEO/Issues/2018/09/24/world-economic-outlook-october-2018
*5 国際協力銀行 インドの投資環境/2017年8月 (第3章 経済概況 ) https://www.jbic.go.jp/ja/information/investment/inv-india201708.html
*6 Make in India www.makeinindia.com/home