JK_Tomorrow-Maker’s blog

ビジネスや経済などのニュースや日常の気づきを出発点に、「科学(技術)、心(アート)、モノ(サービス)、デザイン」という4象限を操りながら、自由に発想していきます。発想や着眼の手助けや、思考の自由度拡大の糧になれば、何よりです。

「アメリカ景気後退予測」から

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三点に注目したい。
 1.財政と裁量的経費
 2.貿易戦争と安全保障
 3.雇用状態

関連代表記事 NEWSWEEK 2018年10月4日
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/10/2020-8.php
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A アメリカと景気について、様々な側面の解析がなされ、景気後退や恐慌突入に対する警告がでている。

 

B 重要因子として、少なくとも、財政赤字と貿易戦争の2点は加味したい。財政赤字は2018年度で7,790億ドルであり来年度は1兆ドルを突破するともいわれる*1。貿易戦争はいわずもがな、主に中国との間でのイザコザであり、制裁関税・報復関税が第三段にまで及んでいる。

 

A 財政赤字問題も貿易赤字問題も、表面上の言葉や動きだけに惑わされると、本質を見誤る要素が多分に含まれている。例えば、財政赤字問題では、2019会計年度予算教書から「財政赤字の解消」といういわば伝統的な対策が放棄されている。あくまでも教書であり議会決議ではないのであるが、政権としての意思であるため、無視することはできない。特に面白いのは、テロや戦争という外乱の中にいたジョージ・W・ブッシュといった過去の伝統とは異なり、景気拡大×(比較的)平穏な局面において、財政赤字縮小をとりさげていること。

 

B 今のアメリカを見るときに、雇用状態からは目が離せない。実質上完全雇用状態とも考えられる状態は、失業者がいなくてHappyではなく、ある種の臨界点でギリギリのバランスをとっているようなもの。不安定で仕方がない。余力がない。金利UPに敏感な市場を刺激するような政府の動きがあり、拡張財政の未来形として、景気過熱⇒インフレ上昇⇒金融引締を容易に想像させてしまう。

 

A 常に、「よい局面」の時に、未来の不都合や未来への飛翔への投資・対策を行わないといけない。世界の景気の上下運動をみていると、悪くなると慌てよくなると波に身を委ねるだけであり、よい波に乗りながら次への本質的打ち手を積極的に展開する政権は希少であるといえる。

 

B バラク・オバマ政権時代に財政再建対策がとられていたが、これは表面を繕っているだけであり、本質的には何も手を打っていないに等しい。むしろ悪化させたといってもいいだろう。即ち、裁量的経費*2(Discretionary spending)に上限設定という手を付けた一方、より本質的な義務的経費*2(Mandatory spending)をほぼ野放しにしていた。

 

A 特に義務的経費については、人口動態変化といったマクロ動態が未来に向けて影響してくるため、先手でデザインし実行・蓄積していかないと、良質な打ち手が実現し得ない領域といえる。更に、経費の60%程度が義務的経費であることから、ボリューム的にも、こちらに本確定に手を付ける必要性があるといえる。

 

B  改めて義務的経費に目をむけメス入れするいい機会であるとも、言える。設定した裁量的経費の上限がとれた状況であり、これをもう一度押し込めるのには、相応の力が必用になる。であれば、より根本的で本質的な義務的経費側に議論を廻すというのはありかと思われる。

 

A 一方、貿易戦争。色々といわれるが、その本質は「安全保障」だろう。ハイテク覇権争いは安全保障の基盤力を決める。ここに対して、各国政治事情が入り込み、中国であれば製造2025と一帯一路は習近平からみて必達事項となっている。

 

B 実質的完全雇用下におかれているアメリカがさらなる飛躍成長をするための理想形は、自由貿易・自由労働力(移民)を駆使できる小さな政府状態であるかと思われる。貿易戦争はネガティブな策になるが、安全保障を考えれば必要事項となる。また、この理想形への方針転換はトランプ支持基盤が瓦解するリスクを極端に高めるため、手を付けるにつけることができない領域ともいえる。

 

A このような歪んだ状況下において、金利UPへのアンテナが極端に敏感に作用したり、貿易戦争による実体的影響がジワジワとでてきて、企業の心理に後ろ向きの作用を与え始めると、景気が極端に落ち込み始めることになる。さらに言えば、財政赤字を拡大させながらドルプラットフォームの信頼性が損なわれていくと、景気後退面において安いドーピングしか実施できないこととなり、景気後退をくいとめられなくなるという悪いシナリオも描くことが出来る。

 

*1 Pars Today アメリカの財政赤字が過去6年で最高の7790億ドルに到達
  http://parstoday.com/ja/news/world-i48780

*2 財務省 アメリカ合衆国 2019年度予算教書     https://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na2/us/page25_001258.html