JK_Tomorrow-Maker’s blog

ビジネスや経済などのニュースや日常の気づきを出発点に、「科学(技術)、心(アート)、モノ(サービス)、デザイン」という4象限を操りながら、自由に発想していきます。発想や着眼の手助けや、思考の自由度拡大の糧になれば、何よりです。

「中国膨れる負債総額」から

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三点に注目したい 
 1.中国の蓋
 2.中国崩壊と飛翔 
 3.貿易戦争と金融戦争


関連代表記事 日本経済新聞 2018/10/31 22:18
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37203140R31C18A0FF1000/
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A 負債が膨らみ財務健全性が低下したりゾンビ企業がぬらぬらと出現するのは、その現象自体よろしくないが、それ以上に中国にとっては、「蓋」がはずれるリスクを飛躍的に高めることになる。


B 習近平の絶対達成事項である一帯一路や中国製造2025は、「蓋」が外れるのを抑止するための策でもある。国民を統制し続けることが中国共産党という中国経営の重要事項であるが、最近では、閉じていた蓋からガスが漏れ始めている。一例として、「自国貧困対策は”掛け声だけ”に留まっている状況で、他国への莫大なる無償援助を含めた投資はいかがなものか*1」といった不満がすでに表出している。


A 今まで蓋が蓋足りえた理屈は、経済成長である。不満というのは必ず存在するが、その不満が群と化し膨れあがるか否かは相対的なはなしである。不満をこえる恩恵やイゴゴチの良さなどがあれば、不満は噴出しない。経済成長に陰りがでるほどに、不満噴出リスクが高まるため、アメリカという強大な仮想敵を創り、「私たちのグローバル視座での活動に対して彼らが邪魔をしている、しかし私たちは自国及び世界のために負けてはならない」といったスタンスをとることになる。しかし、アメリカのやむことのない多軸的攻撃が徐々に国民実感として表れるようになってくると、情報操作・規制という荒業を使って環境情報自体をコントロールする必要がでてくる。共産党内外での結束力も緩みはじめ、ますます縛りをきつくする必要がでる。縛れば縛るほどに国民の窮屈さがまし、それが不満に転嫁され…という悪の循環を生むことになる。


B 例えば、2007年から2014年にかけて、中国国有企業の負債総額は、3.4兆ドルから12.5兆ドルへと急膨張している*2。国有企業は約5.1万社あり、これらの抱える負債総額は中国全体の60%に相当し、GDP対比で159%にも及ぶ*2 。また、2018年年初から6月中旬までに、総数363本・総額規模2,270億人民元(約3.9兆円)相当の社債が発行中止/延期されたという*3。シャドーバンキングからの資金調達に依存する傾向の強い低格付社債の信用リスク懸念も表面化してきており、実際、社債のデフォルトが増加している*3。


A 米中貿易戦争は、グローバル安全保障覇権の獲得争いであり、実弾としては貿易から金融弾に移り変わってきている。トランプさんの掛け声で関税攻撃が繰り出されることで、中国の社債信用リスクが一段と高まることになる。例えば、500憶ドル追加関税の際には、中国人民銀行は異例ともいえる大規模流動性供給を行い、更に続けて市中銀行の預金準備率を0.5%引き下げると発表をしている。国内金融市場の安定を狙った行為である。


B 米中貿易戦争によるダメージが蓄積する程に、中国の金融危機リスクが高まる。金融として苦境に立たされ崩壊に向かう過程で、国民の感情が群化し蓋を跳ね上げ爆発する可能性も否めない。それは即ち、現政権の崩壊を意味する。例えば、関税率引上⇒ アメリカでのインフレリスク↑⇒ 長期金利↑⇒ ドル建社債の中国利払↑⇒ 新規ドル建社債発行難↑⇒ ドル建社債デフォルト↑…といった流れも想像しやすい。


A 或いは、米中貿易戦争が長びく⇒ 経済減速⇒ 国内社債デフォルト↑⇒ 理財品からの資金引上↑⇒ 投資会社の連続破綻…といった流れは想像しやすい。


B 日中貿易戦争という構図は習近平の統治に対して隙(反習近平勢力への機会)を産むことは確かであると考えられる。情報不足と経済成長で担保していた蓋の機能も薄れつつあり、例えば、農民工への不満が蓄積、表出し始めている。習近平肖像画に墨汁をかけるパフォーマンスが微博で配信されたという事実もある。綻びがいたるところにあり、嘗てのリジッドな統治体制が瓦解し始めているのは事実であろう。


A 格差があり米中貿易戦争もうけて蓋が外れる…というシナリオを描いたときに、これを「中国崩壊」と捉えるのか、「中国さらなる飛翔へ」と捉えるのかは、また大きく異なる。


B 格差問題などはグローバルにどこの国々も直面する事項であり、調整局面に入るのは時間の問題だろう。この際に中国が崩壊したようにみえるが、それはあくまでも「調整局面」であり、真のグローバルハイテク国家として世界にはばたくための通過点に過ぎないと捉える方が、妥当と考えられる。現在の中国の持っている都市、技術、人は凄まじい。そしてそれらは主要国と交わり解けない状態になっている。これら事実と主要各国の経済上下運動史とに向き合えば、バブル崩壊と騒がれるかもしれない中国低迷化は、飛翔への一通過点に過ぎないといえる。経営的に表現すれば、戦略赤字期として捉えても良い。


A 日本国経営として考えれば、ドルプラットフォームを支えるようにドルを買い続ける暇があれば、もっと中国に継続投資し続ける方がよい。中国を脅威にするのも、パートナーにするのも、自分たち次第である。


*1 毎日新聞 2018年9月6日16時18分 https://www.asahi.com/articles/ASL9552KXL95UHBI01P.html
*2 Zakzak by フジ 2018.8.6  https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180806/soc1808060007-n1.html
*3 NRI financial solution http://fis.nri.co.jp/ja-JP/knowledge/commentary/2018/20180718.html