JK_Tomorrow-Maker’s blog

ビジネスや経済などのニュースや日常の気づきを出発点に、「科学(技術)、心(アート)、モノ(サービス)、デザイン」という4象限を操りながら、自由に発想していきます。発想や着眼の手助けや、思考の自由度拡大の糧になれば、何よりです。

「DeNA、0円タクシー」から

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三点に注目したい 
 1.当たりクジ
 2.ナロー・ポイントキャスティング化
 3.広告自由度の拡張

関連代表記事 産経ニュース 2018.12.5 18:03
https://www.sankei.com/economy/news/181205/ecn1812050028-n1.html
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A 率直な感想は、「発想がありきたり」ということ。しかし、「あたりクジ」的観点とナロー/ポイントキャスティング的観点でみると、非常に面白い。

 

B 無料化すれば消費者(タクシー利用者)にとっては、非常にありがたい。広告モデルでの収益を持ってくることで、国交省の声で決まるタクシー料金(コスト)という呪縛から解放されるわけであり、消費者にとっては本当にありがたい。


A 少し時間を進めてみると、料金を気にしないでタクシーを利用するようになる世界に、たどり着く。このことから、全数無料化は非現実。

 「100m歩くのが面倒だな。寒いし。そうだ、タクシーだ。」

 「終電が…名古屋/東京だけど、タクシー呼んで寝ながら移動しよう。」

 収支は、まず合わない。「ルールでガンジガラメ」にして対応してもいいが、細かい使用ルールは不透明性を産む。


B 0円タクシー第1弾取組として、日清食品を広告主とし、「どん兵衛」化したタクシーを50台解き放つとのこと。タクシーの売上が都心の1日で4万~7万円/台程度とすると、解き放つ50台×1か月で、6,000万~10.500万円/月。全額広告費でカバーされるとすると、ブロードキャストの広告モデルを前提にすれば、非効率な数字である。


A 狙いは、報道にある通り「認知拡大⇒利用者増」であり、これにより通常のDeNAのMOVプラットフォームからの手数料収入を増加させていくこと。つまり、タクシー配車という大きなプラットフォームがあって、その中の幾ばくかの割合が「無料タクシー」であるという状況を「継続的」に生み出すのかと思われる。これは、「当たりクジ的要素」が含まれるため面白い。呼び出したタクシーが「無料」であれば非常にうれしいし、「通常」であっても損した気分にはならない。


B 「あたりクジ的」にプロモーションをかけるのは面白いと思う。通常タクシー配車プラットフォームと、「あたりクジ(無料配車)」を含むプラットフォームがあれば、後者の魅力は圧倒的に大きい。ちょっとした「おまけ」や「福引券」に群れを成す国民性と時代であり、これはマッチしている。


A これを実現させるためには、広告主が継続的に存在すること(お金を投下し続けること)が重要となる。そのためには、プラットフォームの規模を大きくし、高い広告効果を実現する必要がある。プラットフォームの規模を大きくするには、「あたりクジ的」な無料配車枠の、不公平性をなくすことが重要。MOVとして事前にタクシーを呼ぶ際に、当然、目的地も入力する。この段階で、無料配車の可能性については連絡すべき。区間や時間帯による制約を公明正大に表示し、この部分を徐々に改善して、枠を広げていく。


B 規模を大きくしてもそれが、急激に縮小するようでは意味がない。つまり、安定性が必須。そのためには、ハードユーザが必用。例えば、MOVプラットフォーム利用頻度と連動して、無料配車ヒット率を可変にすればいい。使うほど当たりやすくなるのは、ポイントカードが埋まっていく感覚や、お得意様には福引券をプラス数枚プレゼント、といった感覚に近い。


A 広告効果の点に注目すると、キャスト域には注目したい。たとえばタクシーの外観を「どん兵衛」化した場合、町を走る中で不特定多数の人々にPRすることになる。このブロードキャスト要素を少しでもナローキャスティングに近づけていく。タクシー配車プラットフォームの場合、利用者が配車「依頼」した段階で、目的地並びに移動経路を把握できる。清閑な高級住宅街を走行するよりも、「どん兵衛」タクシーにとってより適した経路があることは言うまでもない。配車マッチングの際に、広告効果を上昇させるために、よりベターな経路を通過する配車依頼にマッチングさせることはできる。

 

B 街中を走行していた「どん兵衛」化タクシーを「見た」人が、MOVを使うと割引になる。実際に「どん兵衛」を購入した人へのインセンティブ。系が複雑化するが、広告効果の定量という側面とユーザ数をさらに増やす施策という面では、長期的に検討すべき。


A ブロードキャストを出来るだけナロー化させながら、車内広告や「行先指定」を組み合わせて、ポイントキャスティングに寄せていく工夫を、更に取りたい。車内広告としては、前席背面などに設置されたディスプレイやユーザのスマホそのものを利用でき、登録ユーザ情報や配車依頼内容に適した広告を打つことができる。更に、プラットフォーム側からの提案として、「本日21時までに、戸越銀座に向かうお客様は無料」といったPRもとれる。この場合、広告基本料だけでなく、利用者が戸越銀座で実際に食事や買い物をした結果を受け、そこからマージンを抜くこともできる。


B 無料化するのは非常に簡単であるが、事業収益を上げる原理が不明確の場合、実施すべきでない。急ぎ無料でローンチし、業界をユーザーをひっかきまわし、採算合わずに撤退というのは、甚だ迷惑であ。DeNAの取り組みは、「0円タクシーそのもので利益を出す予定はない」と明言しており、通常MOV側での収益を伸ばすための仕掛けとして、0円タクシーを利用していくと思われる。


A 「あたりクジ」的要素が存分に含まれるため、何%を無料化するか?という経験が強いノウハウになり、この無料率をバリアブル・ダイナミックに変化させ、都度最適化することができてくる。また広告に対する自由度を大きくし、広告に対する費用対効果を上げ続けることで、広告主を安定的に獲得でき、これがユーザ増加・つなぎ止めに影響を及ぼす、正の循環を作ることができる。


/ 18.12.10 JK