JK_Tomorrow-Maker’s blog

ビジネスや経済などのニュースや日常の気づきを出発点に、「科学(技術)、心(アート)、モノ(サービス)、デザイン」という4象限を操りながら、自由に発想していきます。発想や着眼の手助けや、思考の自由度拡大の糧になれば、何よりです。

「ハウステンボス×復星集団」から

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三点に注目したい 
 1.日本人「も」遊びに来る、「海外客向け」の場所
 2.天井を把握
 3.FOSUN GROUP

関連代表記事 朝日新聞 2018年12月3日20時21分
https://www.asahi.com/articles/ASLD3513YLD3TIPE01S.html
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A 多くの報道を横並びに見ると、中国に対する偏見がいまだに蔓延っているのを、感じる。ニセコに対する中国資本の展開であっても、星野リゾートトマムやサホロリゾートエリアに対する復星集団の買収であっても、中国資本の侵略といわんばかりに、騒ぎ立てる。国際感覚が皆無に等しく、非常に恥ずかしい限りである。


B 中国企業の中に、粗悪な経営を行ったり、モラル欠如した行為を当然とする企業が今だに存在するのも事実である。しかし、グローバルに羽ばたく中国企業を筆頭に、国際感覚・経営力を身に着け成長した企業が増加しているのも、また事実である。偏見で思考が凝り固まっている日本人では到達できないような、グローバルにスケールさせながらも、ローカライズさせる戦略を採れる。澄んだ眼で、中国企業を捉える必要がある。


A 復星集団は2014年頃に日本に上陸している。民営コングロマリット企業であり、ヘルス(製薬、病院など)、レジャー(ホテル、旅行代理店、レジャーなど)、金融(保険など)を主に手掛ける。2017年12月期の売上は88B元であり、税引前利益は23B元。利益率26.1%。推移をみると、売上は、2004-2005年頃が20B元程度であり、2012-2013年で50B元程度。EBITDAでみると、2013年が14.2B元であり、2017年が30.8BM元であることから、急成長を続けているとわかる*1。


B セグメント別(2017年)にみると、次の通りである。Insurance and Finance、Health、そしてInvestment分野にて利益が急増していることがわかる。中国政府による資金流出抑制という足枷も存在する。繋がれる鎖が太くなった分、AIへのリソース傾斜を加速させ、顧客データ分析にAIをあてがい、サービス向上やマーケティングを強化していく方向性を打ち出している。これは測らずとも、グローバルで買収した事業群を強化することにもなり、事業構造を、高収益体質・高粘着性に変貌させていくことになる。
 
◆Health分野

 収入22.5B元(前年比+23.8%)、

 税引前利益:1.4B元(前年比+32.1%、0.75B元@2013年)

◆Happiness分野

 収入11.7B元(前年比+12.0%)

 税引前利益:0.5B元(前年比+6.1%、0.3B元@2013年)

◆Insurance and Finance分野

 収入30.0B元(前年比+0.1%)

 税引前利益3.9B元(前年比+59.9%、0.58B元@2013年)

◆Investment分野

 収入42B元(前年比+45.5%)

 税引前利益5.2B元(前年比+22.9%、1.98B元@2013年)

◆Hive Property分野

 収入22.3B元(前年比+49.1%)

 税引前利益2.2B元(前年比+4.6%、1.9B元@2013年)

 


B 復星集団のグローバルな活躍(出資、提携、買収等)は、把握しておく価値がある。代表例は以下の通り。中国政府としての資金流出抑制への圧力・仕組はあるものの、動きを完全に封じられているわけではなく、着実にグローバルコングロマリット企業へと成長している。また復星集団の特徴としては、短期での売却益を追うのではなく、長期リターンを志向する傾向にあることである。

  ・2010年 Club Med(仏) 9.95%(4,100万ユーロ)
  ・2011年 FolliFollie(希) 9.96%(7,200万ユーロ)
  ・2013年 St.John(米) 33.9%(5,500万ドル)
       AlmaLasers(以) 95.2%(2.2億ドル)
       Saladax、Caruso、Atlantis、Liberty28…
  ・2014年 Secret Recipe(馬) 2.1億元
       イデラキャピタルマネジメント(日) 98%
       BHF BANK、Osborn、REN、Tom Tailor、ROC Oil…
  ・2015年 クラブメッドトーマスクック、Ironshore、トマム
  ・2017年 フランス パレフ 50.1%(4,500万ユーロ)

 

 

A 資本関係等、精密に調べる必要があるが、大きな企業成長・経営かじ取り・思想だけをくり抜けば、FOSUN(復星)集団は、立派なグローバルプレイヤーであり、経営として組むに値する戦略提携相手である。中国による乗っ取り・侵略と言うのは勝手であるが、であれば、地方創生でも企業経営でも、そこに頼らないで成長を実現する戦略代替案を示す必要がある。ハウステンボスの例では、成長に陰りが見え、国内だけでは回復不能に近い状況であり、インバウンドをフル活用できる見込みが高い復星集団と手を結ぶのは、理に適っている。


B ハウステンボスの復活劇は見事であるが、ハウステンボスは企業成長という面で大きく2つのピンチポイントを有している。

 (1)立地。人口密度が圧倒的に少なく、TDLUSJと同じような事業構造を採ることは不可能である。そして、LCCといった格安長距離移動が充実化することで、関西や関東などのテーマパーク等に、客を奪われる可能性。

 (2)ハウステンボス自体は「ニセモノ(のオランダ)」でしかなく、テーマパークで勝負すればTDLなどに負けるということ。視点を「都市という場所」に設定することで、企業研修なども含め客層の幅が広がるが、集客には、派手なイベントが必須であり、際立ったイベントを「連発させる仕掛け」が必用になる。これがかなわないと、リピータもつかずに、尻すぼみとなる。

 


A ハウステンボスの経営状況は、2017年10月決算説明資料*2をみると次の通り。過去の好調な成長トレンドを踏まえれば、成長鈍化を認めざるを得ない。入場者数が300万人を割っており、TDLUSJの20%程度の規模感であるが、国内商圏を考えればほぼ天井近くにいると考えるのが妥当と推察される。よって、客単価増、商圏拡大(海外組の獲得)、コストダウンといった主な打ち手がでてくるが、既に客単価が10,000円程度であり、ハイクラス側へのシフトが困難であることを踏まえれば、本質的に、海外客を増大させることが必用になってくる。

  (ハウステンボスグループ)
  ・売上: 36,780M円
  ・営業利益: 7,688M円

  (ハウステンボス単体)  
  ・入場者数: 288万人(前年比99.5%)
    ・海外客: 19万人(前年比93.2%)
    ・宿泊数: 31万人(前年比101.5%)
  ・取扱高: 29,150M円(前年比101.9%)
  ・単価: 10,118円(前年比102.4%)
  ・営業利益: 7,587M円(前年比100.1%)


B インバウンドの隆盛ぶりは言うまでもなく割愛するが、それを「どう獲得するか」という点がポイントになる。その点で復星集団のような中国企業と連携するのは効果が大きい。今回、復星側の出資比率は24.9%に抑え、HISが50.1%、福岡経済界が25%を保った状態で、復星集団から役員を1人以上受け入れるとのこと。また、経営かじ取りは従来通り行うとのこと。ここで、あまりに復星の関与を遠ざけるような行動をとったり、復星の役割はインバウンド客の送り込みと硬く捉えるのは良くない。


A 中国客は海外客の30%強の6万人ほどといわれ、これを20万人まで増加させることを狙うという。この場合、国内一定とすれば、入場者数が約300万人で、海外客数が43万人、即ち海外客比率15%弱に向かう。このような状況で、国内向けオペレーションをとり続けるのは、中長期で重要になる海外組リピーターを採り逃すことになる。ハウステンボスとしては、「インバウンドが気持ちいいと感じること」に真摯に対峙し、イベントやハードなどを最適化することが望まれる。


B 土地の利を考えるのであれば、日本旅行に対する「玄関・出口」としての機能に近づけていくべき。日本旅行スタートの景気づけにハウステンボスで遊びつくすのか、或いは、日本旅行のクロージングとしてハウステンボスで過ごすのか。例えば、羽田から入った観光客が、ハウステンボス経由で九州から帰国してもいいわけである。国内人口のマクロ動向を踏まえれば、人数という規模は、海外客に頼らざるを得ない。やるべきことは、「海外客向けの場所」へと変貌することであり、そこに所定割合で日本人「も」遊びに来る場所への変貌である。


A 復星集団のもつ生の声と解析データを、ハウステンボスの変貌に対して積極的に使うべきである。日本的経営を…日本的解釈を…と言っている場合ではない。手段は顧客の未決課題に応じ、フレキシブルに最適化すべき。日本旅行の「初めに」何を望むか。「最後に」何を望むか。これらに合う空路、海路、陸路を整える。そして、「彼らの」心をくすぐるイベンドをファクトベースで考え、中国人芸術家などの力もかりて、非線形的にアート(イベント)へと昇華させ続けるフローを構築できれば、ハウステンボスは日本の中の異世界として輝きを放ち続ける。


*1 Fosun http://ir.fosun.com/phoenix.zhtml?c=194273&p=irol-IRHome
*2 HIS 決算説明資料 https://www.his.co.jp/ir/presentation/

 

/2018.12.10 JK