JK_Tomorrow-Maker’s blog

ビジネスや経済などのニュースや日常の気づきを出発点に、「科学(技術)、心(アート)、モノ(サービス)、デザイン」という4象限を操りながら、自由に発想していきます。発想や着眼の手助けや、思考の自由度拡大の糧になれば、何よりです。

「D&G、上海ショー中止」から

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三点に注目したい 
 1.相手がどう思うか
 2.思考のレベル
 3.自分の思考レベルと相手のそれとの、乖離


関連代表記事 BBC 2018年11月22日
https://www.bbc.com/japanese/46301811
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A 「軽率なビデオ内容」…と言うだけなら簡単であるが、歴史を振り返れば一流と呼ばれる企業が「軽率な」行動やプロモーションで炎上するケースは後を絶たない。更に問題発生後のトップの対応が、火に油を注ぐケースも無数に散見される。本件を経営としてみるのであれば、「そもそも、なぜあのような広告ビデオを作ったのか」という点と「事後処理」の2つについて考えることが有益だろう。前者について、探ってみたい。


B 社内でプレゼンするのであれば「誰に対して」説明するのかを明確にしておく必要がある。新しい製品を作るのであれば、顧客の顔を明確にする必要がある。効果的に営業成果を上げるの出れば、相手が世間話のような時間を「無駄」と考えるのか、コミュニケーションの一環で「好む」のかを把握する必要がる。共通するのは、「相手の思考レベル」であって、「相手がどう感じるか」という点である。


A デジタル革命は多くの利便性を提供したが、場合によっては経営リスクを高めることとなった。例えば、従前の環境では、フォーカスしたメインセグメントとの対話という形で世界がクローズしていたが、現在ではそんなことはない。自分たちが真剣に主顧客と対峙していたとしても、第三者がそのやり取りの中から「不平等」「差別」「偏見」…を取り出し、SNSで拡散させることができる。それを「不平等」と思う人は確率的に少なくとも、SNS上に載れば大きな規模がついてくるため、自然と絶対数が大きくなり、拡散・炎上が始まることとなる。


B 「相手がどう思うか」。自社顧客・顧客候補は当然として、自社ステークホルダーも当然。しかしこれでは不十分。一般社会通念的な「ただしさ」という観点で、世間一般という像が思う事、を常に考えないといけない。これらのマクロな像は些細なキッカケに飛びつき急成長することもある。自社としてはサプライチェーン全体の健全性や社会に対する公明正大な姿勢という対応が必用にもなってくる。表現の自由度という観点でみれば狭まり窮屈な感を受けるが、「受け入れられる」ことを前提とすれば、ここは従わざるを得ないし、むしろ自社の武器にでもすべき部分である。


A 視線を落とせば、Xハラスメントも同様である。「相手がどう思うか」が論点になるためその輪郭が不鮮明になる。しかし、1人のバリューではなくチーム全体としてのバリューであったり、社会全体でのバリューの最適化を考えれば、「相手がどう思うか」の部分に自ら積極的に思考を巡らせ行動を起こすのは必要であり、重要なスキルとなる。共感(empathy)とか思いやりとか言われることも増えた。これらが常に正しいと言うつもりもないし、行き過ぎればデメリットが強くでてくることも事実だろう。すべてはバランスであるが、それでも、「相手がどう思うか」をケアする必要がある。


B 例えば、セクハラ防止は重要。社会と女性との関係を起点に「セクハラ」に対する指摘や改善活動が増えてきている。これはいいことであるし、必用であり、セクハラレスの組織体を経営者として構築するために、頭を足を使う必要がある。一方、例えばだが、よく「おやじ臭」と男性を揶揄する女性を見かけるが、ある時を境におやじ軍団が、「それはセクハラだ」と言い出したら、それはセクハラになる。つまり、例えば、セクハラレスの組織体を構築するのであれば、女性が…男性が…ではなく、「相手がどう思うか」を思考し行動できる人財を育て、組織としてこのような思考での自浄作用が機能するように文化を構築することが、最も有益と考えられる。


A 菊川さんの出ている「ハズキルーペのCM」は考察の余地が深い。中止に追い込まれるCMが無数に存在する中、なぜ、セーフなのだろうか。「相手がどう思うか」という言葉にも実はフェーズがある。単なる表層の気持ちとして「嫌」と思うのか、深層的に「いや」と思うのか。D&Gの広告ビデオは、どうだろうか。時代としては、中国の人びとが、ビジネスや旅行でグローバルに活動を開始しているフェーズである。中国の経済規模は非常に大きくグローバル中核メンバであることは間違いないが、「中国差別・偏見」は世界的にはびこっているフェーズである。中国国内の自国差別・偏見に対する感度が上がっているのは、まず、間違いないだろう。その上で「箸でモノを食べる」という行為を、D&Gが自分たちと対等に扱わず、下方に位置し表現しているように見えるのが、問題である。


B ガッバーナ氏とドメニコドルチェ氏が謝罪をしているが*1、本当に中国文化を敬っているのであれば、中国文化に対する表現の視線はもっと上向くのかと思われる。経営でも全く同じであり、例えば、BOPビジネスとして新興国に出ていく時に、その地の風習、衛生面、環境、文化…を「見下す」ような思考や些細なそぶりを少しでも見せると、深い強いエコシステムは形成できない。「相手がどう思うか」というのは、「相手を認める」ということであり、「優劣ではなく、相手と自分の差異を受け止めること(興味を持つこと)」である。本質的にこのようなマインドセットができると、言葉1つ1つの表現や行動など、本当に些細な部分にも違いがでてくる。

 

A 経営として、社会的な炎上を起こさない仕組作りは重要である。審議会を段階的に儲けるといったプロセス要素も必要だが、より本質的には、自社従業員が、「相手がどう思うか」を思考の根底に常にセットできている状態を構築することが重要である。そのためには経営幹部が、「相手を認める」ことを言葉と行動で常に公明正大に示していることが重要であり、組織体として「優劣ではなく、相手と自分の差異を受け止めること(興味を持つこと)」を、日々のPDCAや会議などに要素として入れ込んでいく必要がある。そして、このような「相手がどう思うか」という点での考課を加えるといった仕組と連動させ、「相手がどう思うか」という考え方が組織の中を循環し続けるようにデザインしていく必要がある。


*1 CBC Dolce&Gabbana founders apologize to China after ad, Instagram fiasco
https://www.cbc.ca/news/entertainment/dolce-gabbana-apology-china-backlash-1.4917653

 

「魚群探知→交通事故防止」から

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三点に注目したい 
 1.ケイパビリティ」
 2.手段とは何か、何が手段か
 3.PPMシナジー接点


関連代表記事 Business Journal 2018.11.20
https://biz-journal.jp/2018/11/post_25595.html
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A 古野電機は魚群探知機のパイオニア的企業であり、現在では船舶用電子機器メーカとして世界シェアNo.1 (15%)を握る企業である。売上の80%を船舶事業が占める。船舶事業においては、商船用途が市場規模1,700憶円に対してシェア15%、漁業用途が市場規模500億円に対してシェア48%である。船舶事業(本業)の深耕は当然として、平時の経営として、国内インバウンドを機会と捉え通信・GNSS業を次の柱に育てようとする姿勢は素晴らしい*1 。


B 位置測定についてはこの先の時代を更に進め支える技術であり、そこに狙いをつけるのは悪くはないし、運転と場所に関するデータ収集という蓄積した経験を活かせると考えるのも悪くはない。ただし、この戦略には注意点が存在する。それは、スマホエコノミーの影響である。何をプロダクトとして、どこにどうやって搭載して、何をモニターし、価値に転換するか。これを考えるときに、従来のプロダクト屋が技術開発で新しいデバイスを作るのだが、スマホエコノミーの影響を無視すると痛い目に合う。


A インバウンドにターゲットを絞るとした場合、スマホを中心に据えれば、出来ることが飛躍的に増える。新しいデバイス必用だとしても、例えば、飛行機の中や入国ゲートなどで全員に配布できるようにするといった策も考えられる。仮にこのようなモデルができれば、インバウンドと運転といった局所領域に対し、レンタカー/シェアカー屋などを最終顧客に商売するモデルから何段階も飛躍できる。交通事故という狭い枠で考えたとしても、事故率軽減という精密な実績値をもって、それの対価を官からも徴収するモデルも構築できる。


B 狙いを「インバウンドと事故」に絞るのであれば、正確な位置測量は手段の1つでしかない。当然、この位置測量をいかなるプロセスで実現するかも、自由度の1つでしかない。何をモニターするのがベターか。それを実現するには、車にセンサを組み入れるべきか、ETCなどと連動させるか、カーナビと連動させるか、スマホに組むのか、或いはデバイスをレンタカー屋伝いで運転手に持たせるのか、或いは、、、。プロダクトやテクノロジーに自信があり含蓄があり歴史が深いほど、それを使いたくなるのが人の性だろう。しかし、プロダクトもサービスもビジネスモデルも、顧客効用を最大化するための手段でしかないことを決して忘れてはいけない。


A 一方、古野電機が持っている技術的強みに対して、「運転と場所に関するデータ収集」と解釈するだけなのはどうだろうか。例えば、海水に対するノウハウを構築しているハズでる。機器の塩害対策や、船上露出状況での耐自然環境に対する知見だって深いだろう。対塩害・対暴風雨といった観点で、新規事業を探索するのも悪くない。或いは、「船舶」の周辺に、今後の環境規制関連の情報(マイクロプラスチック動向など)や、テクノロジーによる進化(GPS,IoT、AI、VR,MR…など)を加えて、時間を10~15年進めた時に、大きなチャンスがあるのではないか。「運転と場所に関するデータ収集」であっても、1つの船に対する情報と考えるのと、自社プロダクトを積んだ船団と考えるのとでは、天と地ほどの差がある。


B 例えば、船舶事業の自社顧客に対して、マイクロプラスチック自動分析センサを無償で提供し搭載してもらう。嫌がるのであれば、船舶電子機器に対するメンテ・補修のディスカウントをするなど、餌をつける。マイクロプラスチック自動分析センサを搭載した船が全世界を航海することで、自社が、すべての海のマイクロプラスチックを可視化できるグローバルリーダになる。密度分布やその動きも終えるだろう。グローバル視座でのマクロな対策だって提言できてくる。これ自体が直ぐにお金に化けるわけではないが、その意義は長期的に大きい。ビジネス性も多用な切り口で検討できる。大きく果敢なアクションとしては、例えば、そのデータをもとにグローバルな環境に訴え、船に対する海洋分析センサー搭載を義務化させるアクションをとり、自社マイクロプラスチック自動分析センサの仕様を標準化させる。仮にこの方向性で動くのであれば、欧州委員会欧州委員会のCEP(Circular Economy Package)関連にパイプのある人財を獲得したり、関連性のある且つ船関連の現地企業を1社買収しておく、データサイエンティスト雇用を進め設備を整える…などの行動をしていくことになる。


A 戦時になってしまえば現業のやりくりで手一杯となり、次の事業創出の余力がなくなる。平時経営できている現在だからこそ、次の事業創出に向け、しっかりと歩みを進めるべき。この時に、新しい事業の本質的な位置づけについて、入念に考察しておくべき。PPMで見た時に、時間延長したとすれば、何が課題となるのか。他事業との相乗接点をどこにもたせるべきか。だからこそ、XXXな事業を創出すべき!という強い動機が生まれる。


*1 古野電機 IR・投資家情報 https://www.furuno.co.jp/ir/

 

「RIZAP、終焉」から

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三点に注目したい 
 1.「結果コミット、科学性、人財」×「時間」
 2. PL上利益・キャッシュフロー
 3. シナジーと事業特性


関連代表記事 Business Journal 2018.11.20
https://biz-journal.jp/2018/11/post_25597.html
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A RIZAPの「赤字」について騒いでいるが、この未来は正直ベースで明確にみえていたこと。騒ぐことではない。買収により負のノレンを計上して、「PL上の」利益を押し上げる策を繰り出していた状態*1。買い組み入れた企業に対する、本質的で劇的な成長改善プランがないかぎり、自転車操業的になるのは必然であるし、あのペースで負のノレンを計上する買収劇で、劇的改善を連発するなど非現実である。買収を重ね成長するのであれば、ポートフォリオ的な高い視座での成長ストーリーデザインと、M&Aを成功させるノウハウ構築を可能にする組織体制・仕組、そして優秀な陣営が必用になる。日本電産を見習った方がよい。そして、PL上の利益は恣意的な産物であることと、キャッシュフローベースで考える重要性の意味合いを、今一度考えた方が良い。


B 見えていた未来に対して特段騒ぐことはないし、これでRIZAPの成長神話が終わるなどと主張するのもまたどうかと思う。現状の経営陣営に今までの戦術を脱した本質的な戦略をとれるかは定かではないが、RIZAPという企業体の有するビジネスモデルやケイパビリティを活かすことを考えれば、リバイバルプランはいくらでも描ける。


A 一言でいうなれば、ライザップは「結果コミット、科学性、人財」という3項目に「時間軸」をかけあわせ、熟成させ、これらをフル活用できる状態でビジネスを広げていくべき。中心にあるのは、ボディーメーク事業でよく、ここで原資を創り、ノウハウを構築し、人財依存度の高い部分への科学的メスをさらに入れていく。それらを使いながら、裾野を拡張したり、飛び地を創造していく。


B ライザップはフィットネス領域でいえば、間違いなく革命児である。中高年を対象に短期で結果にまで繋げるそのやり方が取り上げられることが多いが、それだけではなく、駅から遠い建屋に場所を確保するなどして、限界利益率を飛躍的に高めることに成功している。一般的総合型クラブのそれが20~30%であるのに対し、ライザップのそれは80%近くに及ぶ*1。


A まずライザップとしてのボディメイクを考えれば、「アフターケア」の充実は必須であろう。短期で結果にコミットして、リバウンドして、また短期で…というのは事業の売上だけみればいいのかもしれないが、顧客への提供価値を考えれば、短期で改善しそれを継続できるというのが本質的である。即ち、短期で改善したBODYを維持するために、「さらなる継続的運動」「健康的食事」「健康的睡眠」…などが必用となる。また、ライザップ事業構造と限界利益率の点に注目すれば、これを更に推し進め強みを強化する策も面白い。即ち、アフターケアにおける「さらなる運動」は、一般的フィットネスジムや総合ジムへの「誘導」によって実現する。自分たちで運営せず、業界的には競合となる関係者に、自らの顧客を流し利ザヤをとる。同様にエステなどにも、自社顧客を誘導できる。


B ライザップの代名詞ともなった買収劇については、改善した体を衣装で素敵に飾るなどではなく、内/外面からの美しさに訴求できるサプリ・健康食品などに対して行う方が良い。或いは、リハビリ事業でもいい。このような領域は、主軸であるボディーメークのRIZAPと相乗するものであるし、ここで確立してくブランドを使って、今後の変革型ドラッグストアに深く食い込み、一般消費者に対してより深く浸透させるという方向性も採れる。


A 一方、ライザップの短期結果にコミットという軸で考えれば、短期で成果を保証しやすくサイエンティフィックなアプローチを採れる分野を補強することが出来る。それは既にやっているゴルフや英会話であるが、主軸はやはりボディーメーク側におき、ボディーメークでの拡大モデルを、これらのゴルフや英会話、或いはプログラム…といった部分に適用していく流れが綺麗である。


B  更に、ライザップのボディーメークは科学的アプローチをとる一方、属人性が高い状態であるのは事実。この属人性を科学しフィードバックしてケイパビリティを育むのは当然として、属人性を利用するという手がある。即ち、人財派遣モデルである。例えば、事業構造の限界利益率的特徴から無店舗化を進めるというのも手であるし、企業や個人に対してボディーメークトレーナーを派遣する立ち位置に立つのも手でる。より身軽になれるし、一方で強みは強化されるため、悪くはない。


A  このような「結果コミット、科学性、人財」×「時間」という考え方がライザップの成長にとって重要であると考えられる。ボディーメーク界においてライザップでの経験自体がブランド化されればしめたものである。優秀な人財を継続的に獲得し、継続的に排出する、正の循環を形成できる。

*1 RIZAP GROUP IRリリース https://www.rizapgroup.com/ir/ir-releases/

「水メジャー、日本上陸」から

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三点に注目したい 
 1.水ビジネス
 2.官民・三セクは注意
 3.総合サービス


関連代表記事 日本経済新聞 2018/11/10 朝刊
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO37579430Z01C18A1EA6000/
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A 水メジャーによる日本侵略のような印象を誇張したり、政府の短期的利益追求という指摘が非常に多く、「水ビジネスとしての日本のあり方」がかすんでしまっているように思う。確かに、民営化や、PPP(Public-Private Partnership)或いはコンセッションなどで官民連携を進めれば、コスト削減や充実したサービスというプラス面よりも、商売としての単価増であったり、隠れたるインフラ欠損への対応不備などが露出し、人々の生活にダイレクトに悪影響を及ぼす可能性はある。しかしそれは裏を返せば、莫大なる水ビジネスという機会が存在しているわけであるし、急激に量子的に変化したデジタル技術を前提にすれば、今まで解決不能な領域へも三方よしでビジネス展開可能になってくる。


B グローバルな水ビジネス市場は、2020年で約100兆円規模と試算されている。日本のシェアは2015年で0.4%程度*1。市場構成の約85%は上水道供給と下水処理。グローバルな巨大民間企業は水メジャーと呼ばれ、代表三社は、(仏)ヴェオリア・エンバイロメント、(仏)スエズ・エンバイロメント、(英)テムズ・ウォーター・ユーティリティーズである*2。世界の水道業民営化率を見ると、例えば、Western Europe 47%、South East Asia 20%、Oceania36%、Latin America 21%などであり、世界平均で14%である*2。なお、民営化には逆トレド(官に戻す)も存在していることには、注意が必要である。


A 水について改めて見つめなおすと、地球上の水の約97.5%が海水であり、簡単に利用できる水は約0.01%。全体の2.5%程度が淡水であるが、内80%は氷山、氷河、地下水として存在している。水は石油に代わる資源ともいわれ、次世代のビッグビジネス領域であるとともに、ここを「牛耳る」ことは国家戦略にも直結する要素である。例えば、水情報を収集可能なマイクロチップをトリリオンセンシング的に全世界に散布し、そこから吸いあがる情報を1企業が独占したら、何が起こるだろう。


B 欧米の水メジャーの特徴は、案件策定、EPC、維持管理まで包括的に手がけることを特徴としている。一方日本の水ビジネスに対する存在感は、現在のところ、Japanese QUALITYを主張する従来型の事業として主張されている。即ち、高い技術力を特徴に細切れにした市場に突き進んでいる。例えば、旭化成荏原製作所栗田工業、クボタ、クラレなどの水処理機器、或いは、メタウォーター、日立製作所JFEエンジニアリングなどのエンジニアリングなどがある。


A 日本企業が俯瞰的総合的なサービス展開をしいないのは、日本の水道管理という歴史にも影響を受けている。即ち、水道法の存在である。これにより、水道業は地方自治体が運営することと定められた公営事業として位置付けられてきた。この公営サービスという位置づけが、日本の世界一安全で安定した水の供給、を実現したわけだが、一方で民間企業の参入余地に制限をかけることになった。


B 日本の水道について歴史を紐解いてみると、1957年に水道法が制定され、経済成長と合わさり、急速に水道が普及した。水道の普及率をみると、1970年には80%を超えており、2016年には97.9%を記録している*3。漏水率をみると、全国平均で約5%、福岡・名古屋・東京などは3%を切っている状況であり、ロンドンの25%程度といった値と比較すると、世界的にきわめて低い漏水率で制御できているといえる*4。別の視点で水道料金に目をやると、ガスや電気料金が市場環境に応じて大きく変動するのに対し、水道料金はほぼ一定で推移しているとわかる*5し、実感とも合うだろう。


A このような公共インフラという水事業を考えた時に、管理・保守・更新が必要なインフラを握っている状況というのは、水の利用料が減る未来に対して脆弱であるということができる。実際、水道料金徴収対象となった水量の平均(平均有収水量)は、1990年代後半より減少しつづけており、例えば2000年の340Lに対して現在は300L程度まで減少している*6。人口減少であったり環境意識の向上は、水の利用料を減らす。更に、インフラには「保守」や「更新」という出費(投資)が必須である。これらのことから、水事業の運営を考えると、事業構造そのものを転換する必要があることは目に見えている。


B 1999年にはPFI法が施行された。厚生労働省は2013年に新水道ビジョンを示したり、BOTやコンセッションでの民営化を進めたり、水道再編計画を打ち出したりとしている。


A 日本産業界の動向を平均的に総括すると、環境・エネルギー・ヘルスケア等の分野に対して、蓄積した技術力を、先進国/新興国というグローバルなスケールで解放する必要がある。その上で長期的なR&D投資を継続させる必要がある。技術・経験の優位性はいまだに顕在であり、これらを、世界のニーズにマッチングさせる必要がある。この際に、政府側の産業・政策改革も必須であり、日本が「群」として飛翔できる土壌整備が必要。このようなマクロトレンドを形成することで、長期的な人財育成・開発も叶ってくる。


B 水についていえば、日本の歴史背景からオペレーション部分を官が握っており、官がそのノウハウを有すという構造である。このノウハウを民に導入しながら世界に羽ばたくことで、大局的サービスを展開できる。気を付けるべき点は「技術押し」にならないこと。例えば、水質レベルは低くてもよいから、漏水・盗水対策をきっちりと、そして安価な水が欲しいという地域もある。その土地土地の状況で水供給・管理運用に対する要求事項が異なるのは当然であり、KBF(Key Buy Factor)をいかにくみ出しそれをいかに叶えるかが重要。その中で、日本のお家芸でもある海水淡水化、下水再生技術、或いは漏水防止管理などが活きてくると、非常に面白い。


A もう一点重要なことは、官民連合の扱いである。コンセッションでも三セクでも東京水道サービスのような企業との協働でも、官民が協働する場合、指揮命令系統や責任と権限の所在の明確化、時間スパンの共有化、今後の関わり方等、初めにしっかりとデザインしないといけない。主導権をとるのは民であるべき。また、オペレーション面で官のノウハウを使うことになるが、それの本質を見極め、ブラッシュアップさせること。例えば、東京都水道局傘下の東京水道サービス(TSS)が三菱商事の水ビジネス世界展開に加わっているが、TSSのやり方をほぼ丸々移植したり、助言をほぼそのまま適用してはならない。日本の水管理の何が低漏水率に効いているかをしっかりと見極め、テクノロジーで更に効率的にし、間接業務としての非効率性は徹底的に排除しにかかる必要がある。


B 三菱商事の(豪)水道事業会社UUA買収であったり、日本碍子富士電機の水環境部門が合併したメタウォーター、或いは、荏原製作所日揮三菱商事が共同経営する水ingなどがでてきており、日本技術をいかしながらより総合的なサービス展開を狙えるようになってきている。まだまだ、駆け出しといってもいいだろう。


A 水ビジネスでの世界狙いを考えるのであれば、グローバル地図の上で思考を巡らし、バリューチェーン全体を操り最適化できるような経営手腕が必用になってくる。グローバル展開するにあたり、現地企業とのアライアンスや買収により、地の情報やネットワーク、或いは商習慣に対応する必要もでてくる。バリューチェーンを跨いだサービス展開に総指揮をとりつつ、現地権限移譲をするといった、マネジメントも必要。グローバル展開で成功している企業は、日本にもたくさんある。それら企業の「展開ノウハウ」をいただくという手もある。


B 水ビジネス。視座を1段も2段も高く設定し、DreamTeamを構想してみるのも手だろう。DreamTeamなど考えるだけ無駄だという意見もあるが、それを実現させるために、頭と足を使うこともできる。或いは、DreamTeamを考察する中で、より明確にKFSが見えてきたリ、成長へのステップが明確になったりすることもある。

 

*1 METI 水ビジネスの今後の海外展開の方向性
http://www.meti.go.jp/press/2016/03/20170313001/20170313001.html

*2 JRI https://www.jbic.go.jp/wp-content/uploads/topics_ja/2014/04/20640/danno_20140317.pdf

*3 厚生労働省 水道の基本統計 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/database/kihon/index.html

*4 水道技術研究センター http://www.jwrc-net.or.jp/hotnews/pdf/HotNews543.pdf

*5 総務省 家計調査 https://www.stat.go.jp/data/kakei/index.html

*6 総務省 地方公営企業決算 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/kouei_kessan.html

「真の欧州軍」から

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三点に注目したい 
 1.NATOというプラットフォーム
 2.プラットフォームと時代背景
 3.変革への道のり


関連代表記事 日本経済新聞 2018/11/14 1:20
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37730680U8A111C1EAF000/
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A 欧州の自立。これは長く議論されている議題であり、PESCO*1(常設軍事協力枠組)のような具体的活動も起こしている。今回、マクロン大統領の「真の欧州軍」の掛け声に対し、メルケル首相が欧州議会で「我々は真の欧州軍をいつか創設するためのビジョンを話し合うべきだ」と述べたのは、非常に重要である。


B 関連代表記事によれば、メルケル首相は反論しているトランプ大統領の意見(米国に対抗する欧州自衛の軍である、という指摘)に対して「欧州軍がNATOの補完になる」と述べたとのこと。しかし、これは言葉遊びにすぎるのではないだろうか。欧州としての自立を目指しPESCOのような取組で軍事力を強化する分には、一貫した総指揮系統は整備されないため、NATO>>EUという軍事力関係に落ち着きやすく、EUの軍隊はNATOを補完する要素になりやすい。一方、「EU軍」を創るということは、総指揮命令系統を有すということであり、NATO補完から逸脱できるようになる。


A 見かけ上は、NATOの枠組み内で「真の欧州軍」が強化されていくことになる。アメリカはもとより、NATOとの衝突もさけるのが妥当である。EU国民の90パーセント以上がNATO加盟国に暮らす現状からみても、建前と本音の使い分けは必須。宣伝文句は、NATO強化のための欧州軍強化、である。

 

B この視点で考えると、トランプ大統領が叫んできた「NATO予算の多くをアメリカが担い、不公平」という言い分は、嘗ての偉大なプラットフォーム戦略を破壊する行動であると考えることが出来る。NATOというのは軍事同盟であり、安全保障プラットフォームである。現代風に表現すれば、フリーミアムに「近い」プラットフォームでもある。


A NATO実体予算の70%程度をアメリカが担う代わりに、欧州各国はその費用負担が小さくなっている。即ち、プラットフォームに参画しやすくしている。これは例えば、「NATO内のX国への攻撃は、イコールでアメリカへの攻撃である」という解釈を成立させ、アメリカという保護力が西側諸国にいきわたるということ。見る角度を変えてみると、アメリカは、欧州各国の「国防予算を減らしている」と読むことができる。つまり、各国が欧州を脱して世界に攻め入るための軍事力が育つ、という未来を潰しているともいえる。


B 真の欧州軍というのは、欧州の自立を支えるものであり、即ちそのスコープは当然欧州の「外」にも向けられる。色々と不安定なアメリカ依存から脱却し、自前でロシアや中国に対峙できるだけの力を養うという方向性である。これはNATOというプラットフォームを創ったアメリカからみれば、根底思想が瓦解する事態であると言える。しかし、サイバー空間が前提になった今の世界においては、地政学的な最適連携のあり方も変化しているのは事実でり、旧来思想に根差したNATOが無価値化してきているという詠み方もできる。世界ポリスとしての機能は、生産性という面でみると、非効率だろう。


A EUからみれば、アメリカ依存状態のままNATOを瓦解させられてしまった場合、ロシアに真向から対峙することになるが、パワーバランスが悪すぎるという現状がある。これらのことを総合的にとらえれば、EU自立化を加速させるのは自然である。なお、交渉力でみればアメリカが圧倒的に上である。EUからみれば、アメリカは、頼りたいけど頼れないし、外したいけど外せない相手である。ゆさぶり攻撃を的確に繰り出せるのはアメリカである。


B 欧州が本当に独立への道をとるのであれば、変化の「過程」の設計が非常に重要になる。いきなり放り出されることになれば、プーチンの目が青く光るだけである。NATO体制を維持しながら体力をつけるという進み方は必須でり、この過程でアメリカのご機嫌を取ながら、各国との連携交渉や軍備増強を進めることになる。理想は、水面下で未来のEU軍の各パーツが作られ、ある時に一気に「EU軍」として頭角を現すこと。非連続な変化は、大きなことを成し遂げるときの、良質な戦略要素になる。


*1 EU Permanent Structured Cooperation (PESCO) - Factsheet
https://eeas.europa.eu/headquarters/headquarters-Homepage/34226/permanent-structured-cooperation-pesco-factsheet_en

 

「中露が握る原発市場」から

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三点に注目したい 
 1.廃炉専門
 2.言葉とイメージ
 3.感情論


関連代表記事 日本経済新聞 2018/11/17 朝刊
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO37873500W8A111C1MM8000/
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A 「原発」というと、日本ではすぐに感情論が巻き起こり、「安全保障、エネルギー自給率、エネルギーポートフォリオ、未来のエネルギーのあり方」…などの、より重要で議論すべき事項にまで到達できない。本質的な問題を抽出する部分に、無意味な感情論は持ち込むべきではない。一方、戦略実行フェーズでは感情論が重要になるため、戦略案設計時には代替案含め、存分に考慮する必要がある。

 


B 代表的な原発建設中・計画中の国名と件数*1は、次の通り。
 
 (国名/建設中/計画中)
 ・中国/21/24
 ・ロシア/8/16
 ・インド/7/6
 ・韓国/4/1
 ・UAE/4/0
 ・日本/3/8
 ・米国/2/3
 ・トルコ/0/8
 ・ウクライナ/2/0
 ・スロバキア/2/0
 ・パキスタン/2/1…等

 


A 原発は言うまでもなく軍事力の一側面でもある。中国・ロシア・インドが原発を多く建設していくという状況をどうみるか。中国であれば、中国製造2025にとって原発は主要事項でもある。中国は、米仏のPWR(加圧水型軽水炉)を基盤にし自主改良した第3世原子炉である華竜1号を、パキスタンなどに輸出することにもなっている。日本であれば、例えばロシア原発での電力を直流高圧のスーパーグリッド経由で国内に入れ込むという手も、容易に想像される。


B 安全保障であったり、エネルギー自給率、或いは環境や未来交通を支える電力源…色々な視点で原発必要性を訴えたとしても、日本では、感情論が先行し、議論の「ぎ」にも立ち入ることが出来ない。EVなどの電化を急伸させて電力不足にするという手や、長時間寝かせるという手もあるが、日本においては、やまぬ感情論という壁が出来る現状から、原発輸出での経済活性化はあきらめる方がよい。


A 原発状況を眺めれば、原発輸出ではなく、「廃炉」にも目が行く。この部分で日本が世界をとる可能性は、やり方によっては、まだまだあるだろう。原発輸出は完全にあきらめ、世界の廃炉ビジネスに特化していく。むやみに国策で原発支援したり、私企業に圧力を加えることは中止する。一方、国策で廃炉をリードする。


B 日本にいる原子力関連の技術者を、各企業や組織がバラバラに抱えるのではなく、一か所に集めた方がよい。各企業から組織を人を「切り出して統合・集積」する。日本として、廃炉企業を統一する。技術者不足も暫定的にこれでカバーする。その上で、将来の廃炉ビジネスをとるための技術をしっかりと構築していく。


A 世界の原発廃炉市場は、2030年までに29兆円程度と言われる*2 。当然世界的な戦いになるわけだが、廃炉特化により一気に成長させる。そして、KFSの1つである技術者獲得に対して、日本だけでなくグローバル人財の獲得を目指す。その為に、企業・事業イメージをかえる必要もある。「廃炉」などという後ろ向きの暗いイメージに、人は群がらない。化学という古い言葉であっても、グリーンケミストリーと銘打つだけで、その印象は大きく変わる。


B 環境、人々の命、地球、‥‥に大きく貢献するのが、廃炉ビジネスである。見据えるのは「廃炉の先」だろう。廃炉してどうするか?の部分まで見据えることで、廃炉という作業がよりクリエイティブなものへと変貌する。廃炉専門の機関として、大学教育にもコミットしていく必要がある。単なる危険作業ではなく、クリエイティブで未来を再創造するグリーンな学問分野であるということを、優秀な学生に理解いただき、専攻を深め人財を育成していく必要がある。

 

A 日本として、自立電源としての原発の意義は深いが、原発輸出側はすでに魅力乏しく、だらだらと可能性を探り続けるのは損失でしかない。官僚の無謬性であったり、サンクコストに引きずられてはいけない。

 

 

*1  日本原子力産業会 世界の原子力発電開発の動向2018年版
  https://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2018/04/doukou2018-press_release-r1.pdf

 

*2 BS1 world watching https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2018/04/0412.html

「ウィーワーク、交流促すオフィス」から

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三点に注目したい 
 1.「最強のチーム組成、及び運用環境」プラットフォーマ
 2.個人、チーム、チームとチームの能力
 3.プラットフォーマとして支配権を握る流れ


関連代表記事 日本経済新聞 2018/11/15 朝刊
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO3777282014112018TJ2000/
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A SBGがウィーワークに総額1兆円近くを投じていることになる。ウィーワーク自体は、世界24カ国、83都市で事業を展開し、31万9000人の会員数を誇る事業体である。フェーズとしては果敢な投資で成長促進する期であると考えられる。売上を拡大しながら戦略的な赤いEBITDAをデザインし、時価総額を上げ、必要あらば膨らんだマルチプルで直ぐに買収をかけ成長を更に促進する段階。


B  ウィーワークの価値や意義について色々と議論されることが多いが、1つ注目すべき点は「最強のチームとは何か」という問に的確に回答できる企業になりうるということではないだろうか。


A 日本が直面している生産性問題は根深いが、グローバルにも当然あてはまる議題である。特に日本の場合は、歴史的に放置してきた嵩張る間接部門の影響で、過度に生産性が低いのが大きな問題。嵩張った部分をシェイプアップし分母を小さくする手術は必須であるが、その後必用になるのは、生産性の分子。即ち、同じ時間枠で発揮可能なバリューをどこまで上げられるのかということ。


B 個人個人の能力開発や、AIなどで武装することにより発揮できるバリューを底上げすることは重要。これと対を成すのが、チーム(組織)としてのバリュー。組織としてのバリューは、個々人の人間性や内面の影響も色濃くでるため非常に奥が深いが、テクノロジー進化により見える部分も多くなってきている。HR-TECHに代表されるX-TECH領域の貢献が非常に大きい。特に、スマホセントリックな世界が実現したことや、トリリオンセンシングのようなIoTの世界に突き進みそこにAIが相乗していく世界は、「個人の本質的能力」「チームとしての最適解」といった領域を、今後より活性化させドライブしていく。


A 「個人の能力とは何か?」をより正確に握る力は、「最強のチーム組成」の土壌になるだろう。個人の能力というのは非常に奥深い。例えば、有機合成を15年やってきたR&Dを生業とする人財Xがいた時に、この人財Xの歩んだ道を単に見える化しその専門性を別途評価したとしても、その人財に対する評価は「有機合成分野での…」という断り書きが付くことになる。しかし、日々の仕事への姿勢をみていると、情報さえ常に刷新すれば、人財Xは有機合成に関わらず多くのR&D分野にて大きな戦略的道筋をたてそれを引っ張る能力に秀でていると評価できたかもしれない。或いは、皆が嫌がるようなチームをクローズさせるようなフェーズでも、リーダーシップを発揮し、周囲に気を配り、ことを遂行できる貴重な人物かもしれない。これを、表面上の有機合成という専門分野上での活躍のみで評価すると、大きな機会ロスをしかねない。


B 本来であれば、上司の部下に対する評価でこのような側面が抽出されるべきだが、半期に一回程度実施されるであろう面談で、このような踏み込んだ部分にまで対話をし評価をし、それを蓄積し、いつでも人事ファイルとして引き出し、トップのカードとして機能するようにしている企業は少ない。理由は2つある。1つは、一貫した人事評価・管理系がないこと。2つは、評価する側の意識や能力の欠如。HR-TECHのような仕組みは、これらの問題を破壊できる。しかし、そのような仕組を企業に導入しても、それを運用可能な組織体系や意識改革が伴わなければ、導入しても微小な効果しか享受できない。


A 「いい仕事をする人」は「幸福である」確率が高いということがわかっている*1。幸福学は世界的に注目を集めており、それは、個々人の生産性向上につながり、チームとしての生産性に繋がっていく要素である。個人の本質的能力を見極めた上で、プロジェクト内容に合わせて必要な人財を選択していくわけだが、この時に個の能力だけでなく、チームとしての能力という視点が出てくる。当然、チームとチームでコラボするときは、チーム群としての能力という問題がでてくる。


B ウィーワークの秀逸なのは、「新しい可能性を見出せる最先端の場所」といった名札が既についているため、そこに参画する企業も、このような路線を意識しての参加している点である。自社内では部門間の壁や役職の壁をどうどうと構えている古株企業であっても、ウィーワークへの参画については「変わろうという意識」をもって参画しているケースが比較的多い。


A 登録されている企業や個人の情報。イベントでの振る舞いや交流の情報。コラボした企業や個人が産んだ成果物やそこに至る過程の情報。しかけるイベントの内容と、コラボ率や成果物創出率との相関。ウィーワークオフィスを利用している企業の、利用に対する本社の指示命令系統の状態。。。新しい知の・働き方のプラットフォーマであるウィーワークはこれらを採れる立場にいる。得た情報から最強チームの示唆を、新しいチームの出会いへと無償で導入していけば、正の循環が形成される。

 

B 表現をかえると、グローバルな企業のイノベーションを支える「最強のチーム組成、及び運用環境」を提案するプラットフォーマとして、ウィーワークは未来を支配できる可能性がある。現在はこの路線「色」をまだ強くだす必要はない。戦略赤字で拡大を継続し、ウィーワークという場になれたユーザが十二分に増殖した段階で、徐々に路線を明確にすればよい。その際、USERがウィーワークに要求する事項を改めて洗い出す必要があることは言うまでもない。

 

A 急激に「色」を変えると、止まらぬ脱退という流れができる可能性がある。獲得したUSERの一定数の脱退は未来に向けて許容できても、許容不可なボーダは存在しており、そこを見極め、未来の絵を実現するために舵をとる必要がある。どの路線にいずれウィーワークが動くかは定かではないが、現状の「場」に対して、より強い「意味」が付加されたとき、マルチプルはさらに跳ね上がることになる。

 

*1 HBR EI Series http://diamond.jp/go/pb/ei/