JK_Tomorrow-Maker’s blog

ビジネスや経済などのニュースや日常の気づきを出発点に、「科学(技術)、心(アート)、モノ(サービス)、デザイン」という4象限を操りながら、自由に発想していきます。発想や着眼の手助けや、思考の自由度拡大の糧になれば、何よりです。

「ドイツ、グリーン電力の夢頓挫」から

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三点に注目したい。
 1.エネルギーポートフォリオ(ミックス)
 2.エネルギーの必要性
 3.エネルギー戦略・都市戦略

関連代表記事 ニューズウィーク 2018年10月19日
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/10/post-11138.php
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A 地球環境の観点や安全保障の観点から、エネルギーポートフォリオ(エネルギーミックス)を長期的に動かすのは重要であるが、あくまでもポートフォリオであることが重要である。ドイツとして、時の流れを受け首根っこをつかむロシアの手を解くという目的で、再生可能エネルギーに極端に傾斜するのは、ポートフォリオとしては不健全と言わざるを得ない。

 

B グローバルにみると、IEA(International Energy Agency)が2016年に発表したWEO2016 (World Energy Outlook 2016)*2を代表に、石油生産能力の減少も指摘されており、2050年には現状比で80%程度減になるとも予測されてる。COP21*3では、2050年までに化石燃料の利用を50~80%減にするパリ協定に対し、多くの国が合意した。

 

A この2つはインパクトが大きくて、グローバルに、エネルギー政策の転換、特に脱石油社会へと舵を切ることの必要性を、強く示している。

 

B ドイツを振り返ると、2010年にエネルギー新戦略であるEnergiewende*1を開始した。この中で、再生可能エネルギー構成比を2050年までに60%にまで引き上げることを打ち出した。また、温暖化ガスの排出量80~95%減も示し、世界に対してエネルギー政策の進むべき道を、自ら切り拓きそれを態度で示してきた。また、日本の福島原発事故を受けて脱原発へと舵を切っている。

 

A 今後の世界のエネルギー状況を考えると、デジタルの波の威力がグローバルにかけめぐり、エネルギー消費が指数的に急増すると推察される。例えば、EVシフトであり、例えばIoTによるTrillion Sensingの世界である。更に、貧しい国は、先人がたどった奇跡に倣う必要は一切なく、ハイテク機器・インフラを非線形に導入したり、BOPビジネスを利用しながら急激にハイテク化、即ち高消費電力化していく。

 

B これらの事象を合わせて考えると、単純に、再生可能エネルギー比率を高めればよいとはならない。例えば、太陽光でも風力でも、その発電変動を平滑処理する必要(=新たな投資や維持費)がある。

 

A ドイツであれば、2017年の最終消費に対する再生エネルギー率は15%程度。こお15%を実現するために、250憶ユーロ/年もの投資を行っていることになる。この値を更に高め30%にするなどと言い出すと、国民の支払う電気代への転換が額面として非現実になりはじめる。大型の発電は必須であり、これをポートフォリオとして考えていく必要がある。

 

B 例えば、火力発電を中心に見てみると、技術進化による熱効率改善が進み、CO2生成量は減ってきている。また、CO2回収技術も進み、超臨界CO2サイクル火力発電システム*4の実証なども進んでいる。つまり、火力発電はCO2垂れ流し」という印象は既に過去の遺物に成り下がってきている。

 

A 自然エネルギー利用やEnegy Harvestについても、太陽光、太陽熱、風力、波力、地熱、水力、振動、電磁波…と種々存在する。それぞれ一長一短の特徴が存在するのは言うまでもなく、これらを分散化電源として利用したり、スマートグリッドとして扱っていくことが必用。BER(大規模な電源系統)だけでなく、DER(分散化した小さめの電源系統)も合わせて、エネルギー総体としていかに使いこなすか。大きな視座で将棋のように、どこに何を配置し、どれとどれを連携させるかをデザインする必要がある。その上での投資である。

 

B 発電でいけば、例えば、藻から石油を作り、これを燃料にするという手もある。例えば、太陽光(熱)を蓄電しておき夜間はLEDの最適人工照明で石油を作る。日中は太陽光をいかし、必要な部分は人工光でまかなう。オランダのスマート農業の要領。藻から石油を作りこれを燃料にして、例えば、水電解で水素を生成し、水素としてエネルギーストック。必用な際に水素を取り出し、これを原資にエネルギーに変える。

 

A 発電と蓄電はセットであり、これをデジタルでマネジメントする必要がある。その際に、物理的立地としての駒配置や輸送・利用という戦略要素が必須となる。既存の都市や村に対する供給という観点だけでなく、新しい未来に向けた都市開発という点も当然考慮すべき部分。人でにぎわうクラスタを戦略配置できれば、それをインフラで結び管理したり、クラスタ内での独立電源化も視野に入りやすい。こうなれば、自動運転車でのクラスタ間移動などもやりやすくなる。

 

 

*1 The German Energiewende http://www.energiewende-global.com/en/
*2 World Energy Outlook 2016 https://www.iea.org/newsroom/news/2016/november/world-energy-outlook-2016.html
*3 COP21 www.jccca.org/trend_world/conference_report/cop21/
*4 電機新聞 https://www.denkishimbun.com/sp/29362