JK_Tomorrow-Maker’s blog

ビジネスや経済などのニュースや日常の気づきを出発点に、「科学(技術)、心(アート)、モノ(サービス)、デザイン」という4象限を操りながら、自由に発想していきます。発想や着眼の手助けや、思考の自由度拡大の糧になれば、何よりです。

「ウクライナ協会、独立」から

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三点に注目したい。
 1.アメリ
 2.歴史的事実基盤
 3.ハイブリッド戦争

関連代表記事 毎日新聞 2018年10月16日
https://mainichi.jp/articles/20181016/dde/007/030/032000c
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A ロシア正教会の、コンスタンチノープル総主教庁との関係断絶への動きは、過敏ではなく、妥当であると思われる。また、その背後にアメリカが暗躍していると考えるのも自然かと思う。日本にいると宗教的事象がどこか非現実なものに感じてくるが、世界の成り立ちの1側面は宗教であり、グローバルフィールドでの活動を考えるのであれば、宗教的理解は必須である。

 

B ロシア正教会ウクライナ正教会、そしてコンスタンチノープル総主教庁東方正教会)によって生じている今回の状況を理解するには、歴史を紐解くことが必用。この歴史の紐解きにより流れを把握できる。コンスタンチノープル総主教庁との関係断絶という激しい行動に出ている理由は、今回のウクライナ正教会の独立承認が、無視できない影響をロシアに与える可能性が高いためである。

 

A ウクライナ正教会の規模は約1,500万人であり、ロシア正教会の約7,500万人に対して無視できないボリュームを持つ。正教会キリスト教3大教派の1つであり、信徒数2億人程度。ウクライナ正教会の独立承認により起こりうる大きなリスクは、3つほどある。

  1.正教会における、ロシア正教会の立場を弱める。これに伴い、政治的交渉力やパワーバランスが歪む可能性がある。
  2.ロシア管轄下において、他国での独立機運が高まる可能性がある(ベラルーシ等)
  3.ロシアとしての国民統一性が脆弱化する恐れがある。国民統合の価値観として、民族や宗教を重視してきた。

 

B ロシアの影響力を弱めるという観点に立てば、アメリカが、ウクライナコンスタンチノープルの背後にいると考えることに、違和感はない。見えない場所から相手に大きなダメージを与えるのは、有効な攻撃の1つである。

 

A 10世紀ころに、スラブ圏では、キエフを中心にして正教が広まっていった。歴史が進み17世紀に向けて、ロシアのスラブ圏内での勢力が強まり、正教の中心点がモスクワに移動し、ウクライナ正教会に対する管轄権があることを、コンスタンチノープル総主教庁に認めさせたという主張がでてきた。

 

B この「ウクライナ正教会への管轄権をコンスタンチノープル総主教庁に認めさせた」という「事実」は、ロシアにとっては非常に重要になっている。これがあるからこそ、スラブ圏内でのロシア正教会の権威を維持できていたともいえる。よって、この「事実」が瓦解すると、歴史的な基盤が崩壊することになる。

 

A 今回のウクライナ正教会の独立問題における最大のポイントはこの部分であり、ロシア正教会の主張の有効性を問うており、コンスタンチノープルによる承認の事実があるかどうかが論点になってくる。それに基づき、今回、管轄権が棄却されている。

 

B ロシア正教会としての権威失墜を招く可能性も高く、より根幹にある歴史的正当性を揺るがしかねないのが、今回のウクライナ正教会独立承認である。危機意識は相当大きいと考えられるが、ここに対して、アメリカが一手打っていると考えれば、ハイブリッド戦争が熟成化してきたと捉えることもできる。

 

A 現代の、そして今後の戦争は、物理的攻撃力・支給力だけでなく、情報戦争の側面が非常に色濃い。いわばハイブリッド戦争であり、情報を巧みに利用し、国家や国民を扇動したり、相手国の不利になる状況を作り上げたりしていく。複雑に構成される宗教はハイブリッド戦争という点でみれば、恰好の材料であるといえる。

 

B ウクライナサイドになってみれば、クリミア併合という物理的事象に対して、長い時間を経たのちに、宗教的観点の情報利用で反撃したという見方もできる。