JK_Tomorrow-Maker’s blog

ビジネスや経済などのニュースや日常の気づきを出発点に、「科学(技術)、心(アート)、モノ(サービス)、デザイン」という4象限を操りながら、自由に発想していきます。発想や着眼の手助けや、思考の自由度拡大の糧になれば、何よりです。

「アマゾン、賃金引上」から

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三点に注目したい。
 1.政治PR
 2.競合潰し
 3.給与中央値

関連代表記事 朝日新聞 2018年10月3日
https://www.asahi.com/articles/ASLB334M9LB3UHBI00Z.html
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A 戦略的な臭いがプンプンする。最低賃金が15ドルに引き上げられた!、万歳!で済むような話ではないだろう。

 

B 時給が7.25$から15ドルに上がったかわりに、ストックオプションや月ボーナスなどがなくなり、年収としては下がる人々もいる*1という記事もある。この側面を切り出せば、政治的PRという詠み方ができる。

 

A 政治PRもあれば、積極的競合潰しもあるのではないだろうか。アメリカの記録的な低い失業率は注目に値する。起きていることは、人財獲得コストの上昇であり、今回の騒動がなくとも、自然に時給UPに至っていたと考える方がリーズナブルだろう。

 

B 労働市場のタイト化があるなかで、業界としても、給与の上昇はゆっくりと起こっている。アマゾンは薄利多売のECと高利率のAWSで事業を構成している。売上8割はEC。主戦場(EC売上の60%)である北米でみれば、利率2.5%程度のEC事業に対して、利率25%程度のAWS事業が北米ECの1.5倍程度の利益を上げている*2。EC事業に対して、AWSというリッチな利益を生む源泉を持っているのは、単なる小売業に比して、相対優位性が高い。

 

A Death by Amazon と言われるように、一流の小売業者が閉店へと追い込まれてきた。このタイミングで、「この変化に我々は胸を躍らせており、競合他社やその他の大企業にも我々の仲間入りをするよう勧めたい」とPRしながら、最低賃金を積極的に押し上げるのは、競合勢の体力を奪い、自社優位にする戦略にも見える。表面上企業イメージが改善し、競合の体力も奪うという強かな優良戦略ではないだろうか。

 

B タイトな労働市場であり、労働環境の改善が叫ばれる状況で、率先して時給改善を行う。この状態で、競合他社が何もせずにリークなどが起きれば、一気にその評判が落ちることになる。アマゾン自体は規模、時価総額、他事業収益源を持っており、EC(小売り)領域での戦闘体力は非常に大きい。更に、一気に2倍の改善を実現し、アメリカ労働者の時給中央値とほぼ同じレベルに改善。

 

A アマゾンとしては、よりリジッドなシェアを実現し、高付加価値系事業の拡充を行い、この流れの中で従業員の待遇をより改善していけばよいと思われる。なお、アメリカの著名企業の給与中央値を見ると、Faceboo:240,430$、Alphabet:197,274$、…Salesforce:155,284$…Tesla:54,816$…Amazon:28,446$*3である。物流周辺のブルーカラーが大量にいるため単純比較は困難であるが、価値源泉の物流を支える労働力と、物流×ITやサービス×ITの強化・拡充を考えれば、労働環境改善はまだまだ必要である。

 

*1 Bloomberg Amazon Warehouse Workers Lose Bonuses, Stock Awards for Raises
  https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-10-03/amazon-eliminating-bonuses-stock-awards-to-help-pay-for-raises

*2 Amazon.com 年次報告書


*3 Recode Facebook, Google and Netflix pay a higher median salary than Exxon, Goldman Sachs or Verizon
https://www.recode.net/2018/4/30/17301264/how-much-twitter-google-amazon-highest-paying-salary-tech