JK_Tomorrow-Maker’s blog

ビジネスや経済などのニュースや日常の気づきを出発点に、「科学(技術)、心(アート)、モノ(サービス)、デザイン」という4象限を操りながら、自由に発想していきます。発想や着眼の手助けや、思考の自由度拡大の糧になれば、何よりです。

「マニエッティ・マレリ買収」から

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三点に注目したい。
 1.デジタルコックピット
 2.インテグラルアーキテクチュア
 3.シャープ

関連代表記事 ニューズウィーク 2018年10月19日
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/10/post-11138.php
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A 自動車業界の変革の流れを汲んだ、1つの現象といったところ。自動車部品メーカについてみると、グローバルでランキングトップ5は以下の通り*1。

   1.Bosch 475憶ドル
   2.デンソー 408億ドル
   3.Magna International 390億ドル
   4.Continental 359億ドル
   5.ZF 345憶ドル

  この中でマニエッティ・マレリを買収するカルソニックカンセイは、91憶ドルであり、トップとは5倍もの規模差を持っている。これが買収により2.5倍弱に縮まることになる。

 

B 自動車業界は電動化・デジタル化の波にのまれており、国策要素も強いため、もう止まることはないと考えられる。より高効率な内燃機関は当然残るが、ここのインテグラアーキテクチャによる競争力から、デジタルヴィークルとしてのモジュラーアーキテクチャ構造にシフトし、その代わりに、サービスとしての効用最大化が主戦場となる。

 

A 自動車部品メーカについてみれば、内燃機関で使用していた燃料系、燃焼系、排気系、吸気系、潤滑系、冷却装置…などの機構や部品が不要になる未来が到来することになる。ここに向けた経営戦略が必用であり、各社積極的な動きをしている。カルソニックカンセイからみてマニエッティ・マレリの買収は規模拡大だけでなく、通信系強化の意味がつよいと思われる。要は、デジタルコックピットへの展開である。

 

B 車がデジタル化する中で、物理的自由度は大きくあがるため、モジュール化はより進みやすい。この場合、部品メーカでみれば、コックピット全体をデジタルコックピットとしてみて、それを車にはめ込んでいく。考える要素は、デジタルコックピットとしての覇権をいかにとるかという点と、車が走るスマホとしてサービス展開する際のデータ覇権にいかに食い込むかという点である。

 

A デジタルコックピットでみると、当然、各社自前化という方向もあるが、EVのバッテリーを外注化(汎用化、セミオーダ化)していくように、自動車パーツのOEM化も当然進んでいく。自動車部品メーカとしてみれば、いかにして一気に爆発的シェアを獲得するか、が重要となる。そのためには、物理的な機構とネットワーク・通信などのソフトの機構を必要なスペックで備えるのは当然として、それをいかに安く素早く作り外に出すかというプロセス要素が重要になる。

 

B 私であれば、シャープと組む、といった方向性も視野にいれる。その心はシャープの持つ、デジタル・半導体のスキルと鴻海の製造・調達力。鴻海からみれば家電やスマホで終わらずに、その製造スキルを活かしながら自動車に進出できる意味は非常に大きい。鴻海の持つ製造力は一級品であり、それは単に「つくる」というだけでなく、原材料を安価に素早く調達するといったモノづくりの力をも含んでいる。

 

A 良品を安価に爆発的に供給できるというのはケイパビリティであって、一朝一夕でたちがるものではないから、確かに、鴻海の力を引き出してデジタルコックピットの必要十分条件を満たせるようにしていくのは、方向性としては面白い。であれば、1つ1つ重要なパーツを洗い出し、買収で一気に強化するという方向性もある。自動車の安全設計の観点から、センシングは外すことはできない。この中で、車の外側にセンサーを配置する必要がでてくるが、そこは暴風雨や日光などの晒され続ける部分。仮にこのような課題感に対してミラーの超大手である村上開明堂のような技術が活きるのであれば買ってしまう。村上開明堂のように、現在は一流だが、自動車業界の構造シフトやグローバル化に対し、窮地に立たされている企業は多い。

 

B どこまで手をだし、パッケージ化するのかは大きな戦略要素になる。例えば、セキュリティ企業の扱いや、保険企業の扱い。デジタルコックピットとしてどのような情報を自社管轄下で吸い上げ管理できるようにするのか、そしてそこへのリスク管理をどうするのか。更には、EV戦略を大々的に取っている中国といった市場にとにかく素早く入り込むことを、自動車メーカや製造拠点など踏まえて進める必要がある。今回のカルソニックカンセイのマニエッティ・マレリ買収は、自動車部品メーカに対する改革のほんの一部に過ぎない。


*1 Automotive news 2018 Top Suppliers-FINAL https://www.autonews.com/assets/PDF/CA116090622.PDF