JK_Tomorrow-Maker’s blog

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「ドイツCDU党首選とEUリスク」から

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三点に注目したい 
 1.EU危機へのアンテナ感度を上げるべき
 2.EUの官僚化
 3.メルケルマクロンの衰退はトリガー

関連代表記事 Bloomberg 2018年12月8日 4:02 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-07/PJDP3N6TTDS601
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A ドイツCDUの党首選で、メルケルさんの側近ともいえるクランプカレンバウアーさんが勝利した。反メルケルの重鎮メルツさんと僅差であった選挙結果、(仏)マクロンさんが直面しているデモ状況、Brexit状況等から考えると、EU危機にアンテナを立てたくなる。


B 独紙ビルトが、全代表人に支持候補を聞いた事前調査結果*1は次の通りであった。実質上メルツさんとクランブカレンバウアーさんとの一騎打ち構造であり、争点は、メルケルさんとの「距離」であって、特に難民・移民政策であった。クランブカレンバウアーさんはメルケルさんの腹心的人物であり、メルケル派からの幅広い支持を持っている状況であり、73.1%という「検討中」が意味する流動性の動きが注目されていた。

 ・検討中・・・大半(73.1%)
 ・メルツ支持・・・144人(14.4%)
 ・クランプカレンバウアー支持・・・96人(9.6%)
 ・シュパーン支持・・・29人(2.9%)

 


A 結果は、得票率51.75%でメルツさんを3.55ポイント上回ったクランプカレンバウアーの勝利*2。しかし、僅差である。クランプカレンバウアーさんが足を使い、党内16洲をめぐり意見を聞くといったアクションをとることで、従来のメルケル路線の安定性を求める党員の支持をなんとか取り付けた、のかもしれない。

 

B 重要なことは、メルツさんと「僅差である」ということだろう。メルツさんは党内右派を形成しており、保守回帰を狙っているような人物である。

 

A CDU(キリスト教民主同盟)はメルケル体制下で徐々に左にシフトしている。それと反するように、AfD(ドイツのための選択肢)が台頭してきた。AfDは右派ポピュリストであり、ユーロ廃止を求めるような政党である。以下の3選挙ではAfDが第四政党に入り、FDP(自由民主党)と緑の党を上回った。内2選挙では得票率が2桁に入っており、存在感を大きく見せつけている。特にFPDは得票率<5%であり、州議会からその姿を消すことになった。ラムスドルフといったの大物政治家を抱え中央政界でも乱舞したFDPは、AfDの躍進の影響もあり、凋落へと向かった。

 

 ◆2018年8月
   ザクセン州議会選挙で9.7%の得票率を獲得。
   CDU、左派党、SPD(社会民主党)に次ぐ第4位政党の地位を確保

 ◆2018年9月
   ブランデンブルク州議会選挙で12.2%の得票率。第4位政党の地位を確保。
   テューリンゲン州議会選挙で10.6%の得票率。第4位政党の地位を確保。

 


B AfDの主張に、心を揺さぶられる人は多いだろう。メルケルさんやECB(欧州中央銀行)の主張とは真っ向から対立している。

 ◆ユーロ圏を廃止してマルクの再導入する。
 ◆ギリシャやスペイン等への支援措置を連邦議会が阻止できるようにする。
 ◆加盟国がユーロ圏から脱退することを可能にすべく、EU法を改正する。…等。 

 


A 重要なことは、AfDが2013年に誕生してから、極右潰しとでもいうべきAfD封じ込め行動がドイツ内に多々みられたことである。それにも関わらず、AfDは大躍進し、その存在感を高めている。


B EUは重要な市場であり、この動向には目が離せない。ブレグジット騒動が起きてから、メルケルさんと新星マクロンさんが存在感をだし、メルケル×マクロンという構図でグローバルに政治的リーダーシップをとり、EUを統治(安定化)してくという風潮があった。この風潮(期待)は重要であり、ユーロを支えてきた重要因子でもある。

 

A 現在に目を向けると、マクロンさんは大火事の中におり消火活動もままならない。フランスでは右でも左でも、EU懐疑派が多数存在し、UPR(民共和連合)のように脱EUを目指す勢力もあり、自由への回帰を叫んでいる。メルケルさんの後見バトンタッチはうまくいったが、クランプカレンバウアーさんの勝利はあまりに僅差であり、今後の動向を楽観視できない。そして、CDUが分裂し、CSUキリスト教社会同盟)は弱体化し、AfDが大躍進している。イタリアの対EU動向も不安定性が高いままである。


B 時代の流れか一時誤りという濁流か。起きている現象が、EUの主だった国の極右化として表出すると、EUは一気に不安定化していく。


A EUは本来あるべき機能から徐々に遠ざかり、より官僚化し、ブリュッセルEUの実権を握り、一方的に仕組を各国・EU市民に押し付けている状況でもある。これは大きな時代の潮流に反しているし、豊かなプロダクトやサービスを背景に個別化した理想を追求していく社会に対しても大きく反している。この不整合性に対する歪は、動機として強い反感を産むことになる。


A 通貨信頼性・貿易といった群としてのパワーが強く発揮される部分はしっかりと、機能させるべき。一方、EUとしてより大きな理想を掲げ、各参加国の自由度を上げ、各国がそれぞれの戦略の中でその理想実現に動いていくような、緩いネットワーク化が必用になってくる。現在のシステムに固執し続ける限り、強制的崩壊がやってくる可能性は高い。最強の組織は変化し続ける組織というのは、企業にも当てはまれば、EUのような連合体にもいえる。

 

*1 Doitsu news digest Donnerstag, 06 Dezember 2018 09:45
http://www.newsdigest.de/newsde/news/news/9738-2018-12-06/
*2 CNN 2018.12.08 Sat posted at 12:45 JST
https://www.cnn.co.jp/world/35129834.html

 

/18.12.12 JK