JK_Tomorrow-Maker’s blog

ビジネスや経済などのニュースや日常の気づきを出発点に、「科学(技術)、心(アート)、モノ(サービス)、デザイン」という4象限を操りながら、自由に発想していきます。発想や着眼の手助けや、思考の自由度拡大の糧になれば、何よりです。

「シアーズとチャプター11」から

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三点に注目したい。
 1.店舗数と需要
 2.小売の未来
 3.消費行動変化と競合変化

関連代表記事 毎日新聞 2018年10月11日
https://www.asahi.com/articles/ASLBC1TVCLBCUHBI006.html
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A 小売業界に嵐が吹き荒れている。シアーズチャプター11を申請し、実質的に倒産した。アメリカでは多くの小売店が閉店に追い込まれている。ウォルグリーン、メイシーズ、JCペニー…、そして、トイザらスは2017年にチャプター11申請に至っている。この原因としてアマゾンを代表にドライブされている「EC」が影響しているといわれることが、非常に多い。それは事実だろうが、支配因子かというとそうではないだろう。

 

B Eコマースは日常生活に浸透しているがこれが100%ではなく、店頭での買い物と宅配を適宜使い分けながら、各自生活を設計しているのだろう。当たり前になり急成長が当然となったECであるが、アメリカでの規模は2017年に409Bドルであり、世界第二位。しかし、小売全体でみればそのシェアは10%弱にとどまっている。還元すれば90%強の買い物は、実店舗を介しているのが現状である。つまり、ECの勢いがありDeath by amazonといった言葉が世界を駆け抜ける状況であっても、ECの小売実店舗に与える現時点での影響はまだ少ない。ECによる小売不況は事実だとしても、閉店・倒産に追い込まれる企業が多い現状を鑑みれば、他の因子が作用していると考えるのが綺麗。

 

A 日本でもそうだが、実感ベースで店舗が多いと感じるのではないだろうか。つまり、経済成長に伴う需要増を期待して店舗拡大を先行したが、需要が期待通りについてきていないという結果である。可処分所得の伸びよりも、店舗増数の方が大きいともいえるだろう。報告によれば、必要な店舗面積の2-3倍の量が供給されているという*1。そうであれば、自然淘汰されるのは必然であり、より魅力的な店舗やモールに顧客が集中し、偏在がおこり、閉店に追い込まれる店舗が続出することになる。原点回帰のような揺り戻しでもあり、ある意味、適性値に自然に動いている現象とも言える。経営者として考えれば、適性値にまで揺り戻される中で、店舗の30%なのか40%なのか、どれだけを閉鎖させる必要があるかを読み取り、空いたスペースの有効活用に頭を巡らす必要がある。

 

B もう一つ重要な点は消費行動の変化である。社会性や環境適合性を重視したり、健康や教育を重視したり、「コト消費」をする傾向が強まっている。これは経済が豊かになり物質的な供給が十二分にある状況からしてみれば、当然の成り行きともいえる。ここで起きているのは、従来の単なるモノウリ族とは異なるプレイヤーが競合として台頭してきており、そこに顧客を吸われているという現象である。経営者であれば、自社の顧客への提供価値を改めて見つめなおす必要がある。顧客は「誰」で、どのような未決課題をもっており、それを自社としていかに解消するか。基本中の基本であるが、過去のプライドなどを捨て去り、ゼロベースで改めて考えるべき。

 

A 実物に触れないとわからないこと、は間違いなく存在する。それは手触りであり、香りであり、しっくり感であり、トキメキであり…。しかし、例えば百貨店スケールで「触れるという体験」を提供しようと思うと広大な店舗スペースが邪魔をし、それをめぐる非効率性が出てきたリ、それが負担になったり、顧客の体験が希薄化することになる。例えばそこで、今までの消費行動や事前アンケートなどから最適な巡るルートを提示したり、ブランドを跨いだ組み合わせの価値を提供したり‥できるようにする。イベントとの組み合わせで「試してみたい」と思わせ、それを「試せる」状況に仕立て上げるのも面白い。

 

B 別の視点では、百貨店のような伝統企業であれば、まだ「目利き力」は存在する。BUYMAのようなボーダレスな仕組みが伸び行く世界であっても、プロの目利きと素人の目利きには、雲泥の差がある。モノの情報を取る部分にはITを駆使し、最後の目利き、即ち価値創出については熟練した人間の非線形的感性を作用させるというのは、意味があると思われる。このような目線で見れば、苦境に立たされる百貨店には宝が、フル活用できていない状態で眠っている状況とも言える。

 

A 或いは、ONLINE対応をきっちりと行う中で、垂直、特に川上統合を進め、ある段階で一部の逸品アイテムは店頭でないと購入不能にするという手もある。それは決して嫌がらせではなく、肌ざわりや光の加減などを実感し納得いただいたうえで購入していただきたい品という位置づけ。ブランドコントロールを繊細ち密に実行し、そこからすそ野を広げるという手もある。

 

*1 Coresight Research Deep Dive: The US Retail Revolution Solution
https://www.fungglobalretailtech.com/research/deep-dive-us-retail-revolution-solution/