JK_Tomorrow-Maker’s blog

ビジネスや経済などのニュースや日常の気づきを出発点に、「科学(技術)、心(アート)、モノ(サービス)、デザイン」という4象限を操りながら、自由に発想していきます。発想や着眼の手助けや、思考の自由度拡大の糧になれば、何よりです。

「KYB 改竄」から

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三点に注目したい。
 1.品質とは何か
 2.品質管理QCと品質保証QA
 3.組織としての品質保証

関連代表記事 NEWSWEEK 2018年10月4日
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/10/2020-8.php
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A 不正や改竄などのニュースが後を絶たない。KYB(子会社含)による免震・制振装置の検査データ改ざん。スズキの製品データ改竄。フジクラの検査データ改竄。神戸製鋼所の品質データ改竄…。モノづくり大国ニッポンの、そしてJAPANESE QUALITYというブランドへの信用度が下がってきている。

 

B 組織と不正について、このような企業不祥事をみていると、上に逆らえない社風であったり、現場を無視した経営であったり、不正の状態化であったり…を原因とすることが多い。不正のトライアングルに当てはめた解析が行われたり、未然防止に必要だった事項や、延焼防止の適切性などについて議論が及ぶことも多い。もちろん、組織体としてプロダクトをお客様に提供するわけであり、組織体として品質を維持し保証できる仕組みが必要になる。そこには、人の感情を存分に組み入れた組織文化や風土だけでなく、組織の仕組みも当然重要な要素として組み込まれる。

 

A 気を付けたいのは、2点ある。
   1…品質とは何か?
   2…品質管理と品質保証は本質的に異なる、ということ。

 

B 品質というのは奥が深い。日本にいると「中国品は質が悪い」などという言葉をよく聞くが、品質の良しあしを決めるのは「顧客」であり、持っている技術のレベルや自尊心ではない。自分たちが満足するスペックを決めてそれを作り続けるのではなく、顧客が望むスペックを見極め見えるようにし、それを安定生産するのが技術である。オーバースペック・過剰品質というのは、技術力が有り余る結果ではなく、生産性が低いといっているのと同義である。

 

A 話が少し飛ぶが、単なる御用聞きの営業は、今後、テクノロジーにより淘汰される。これはもはや一般論に近いし、そうなると思う。では、「単なる」御用聞きに属さない営業とはどのような営業人財なのだろうか。それは、顧客の抱える真の課題を炙り出すことが可能で、それを見事に解消するソリューションまで提供できる人財だろう。顧客が、御社の製品Xに興味があるといった時に、単に製品Xやその周辺をPRし続けるのは能無しの所業でしかない。そもそも、なぜ製品Xに興味をもったのかが重要。そこを掘り下げた先に、顧客自身が勘違いしていたり気が付いていないような、真の課題が潜んでいたりする。

 

B そのような目線でみると、品質の定義も同じになる。顧客との契約において、品質を定義する中で、X個の指標全てを高いレベルで仕上げる必要があるのかどうかを見極め、共有し、双方納得する形に落とし込む必要がある。顧客の製品の使い方においては、A,B,Dを最高レベルで管理し、CとEをレベル3で管理すれば十分かもしれない。このスペックでいけば、コストを0.95倍にして納期を1.15倍に早めることができるかもしれない。

 

A そのような妥当な品質を見極めるという行為は、モノづくり現場にとっても優しい行為となる。何でもかんでもハイスペックの日本品質で管理してると、管理基準に入らない場合でも、世間一般レベルでみれば問題にないスペックであると判断できるので、無視してもいいだろうという感情が湧く。一度無視し、二度無視し、気が付くと、文言だけの管理基準と化し当然化する。

 

B 更に言えば、品質の「維持」については、適確で適切な量の管理指標を創ることが重要になる。何でもかんでもあらゆるパラメータを管理すればいいのではなく、原理的に支配度の高い因子であったり、感度の高い因子を管理することが必要になる。むやみに項目数を増やさずに、適切にデザインすることが重要になる。

 

A 一方で、品質管理と品質保証(QC:Quality ControlとQA:Quality Assurance)を半ば混同しているような現場をみかけることもある。これらは全く性質が異なり、言い換えれば、組織の仕組みとしても全く異なる扱いにすべき事項である。

 

B QCというのは、品質の管理であって、所定スペックの製品を安定製造するための社内向け仕掛け。QAは品質の保証であって、自社から顧客に提供する製品に「合格品」という保証を行う外向けの仕掛け。

 

A 言い換えると、QAというのは、企業における最後の砦である。最後の砦が、社内の何かしらの圧力であったり諸事情に左右されてはいけない。よって組織で考えれば、QAとQCは全く別であり、QAとしては、社長と同等の権限を有するようにデザインする必要がある。納期に間に合わない…といった事情などに一切左右されずに、そのプロダクトとして、社外に出すに足るものかどうかを独立的に判断する。

 

B にもかかわらずQAとQCを同じ部隊で担っていたり、QA担当者が事業部長や役員を恐れている状況であったり…とQAの機能を歪めている組織構造であることが多いのが、現状だろう。管理していても、それは保証ではない。出来上がったものを、客観的に判断し合否を判断するのが、保証である。