JK_Tomorrow-Maker’s blog

ビジネスや経済などのニュースや日常の気づきを出発点に、「科学(技術)、心(アート)、モノ(サービス)、デザイン」という4象限を操りながら、自由に発想していきます。発想や着眼の手助けや、思考の自由度拡大の糧になれば、何よりです。

「盛者必衰・ナウル」から

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三点に注目したい。
 1.リソースの有限性と時間軸
 2.組織文化醸成と人財開発
 3.PPMとPLC

関連代表記事 共同通信 2018.10.10
https://www.47news.jp/2854072.html
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A 嘗て世界トップクラスに裕福な暮らしを手に入れた島国、ナウル。リソースの有限性、組織文化の構築、PPM(Product Portfolio Management)とPLC(Product life cycle)などについて、訴えかける事項が多く、学び深い有意義な実例である。

 

B 僅か21km2の島国であり、ドイツ植民地下に置かれた際に豊富なリン鉱石の存在が明らかになり、リン鉱石の採掘・輸出を通じて莫大ある富を築き上げた。医療費や教育費などあらゆるサービスが無償化され、働く必要性すらなくなった島国。リン鉱石という資源の有限性への警告は当然存在していたが、それが現実に尽きる状況に直面するまで、対策をほとんどとっていない島国。

 

A 経営で考えれば、リソースの有限性については、時間軸含めてしっかりとケアする必要がある。ある事業について現時点(現市場・現製品)から最大限の利益を創出することになるが、PPMで考えた場合、これは同時に時間経過とともにこの事業の「次」が綺麗に立ち上がらないといけないことを意味している。つまり、PPM×時間を考えた時に、それぞれの事業プロットがPLCに則りどう移動し、新しい点をどこにいつ創出するかをデザインする必要がある。時間経過で外部性も変わるため、PPMの軸を構成する要素も、時間と共に変化する。

 

B キャッシュを生み、それを次の種・育成に投下する。この循環は相対優位性を生みやすく、理解しやすい美しさがあるが、実行は難しい。ナウルの事例から意識したいことは、「リソースは有限であること」「次の事業の柱を、現事業がフレッシュなうちに育てること」「これらを実現可能な組織を熟成させること」の3点。

 

A ナウルの事例を、人間のエゴとか欲求には勝てない事例などと解釈することもできるが、むしろ、そこに魅力的なリソースがあるのであれば、それをどう使うかを考えるべき。ナウルであれば、それがリン鉱石であった。これを利用しない手はない。ただし、資源の有限性問題や、使うことによる外部環境への影響などに、深く対峙する必要があった。

 

B 理想は、環境などを考えて採掘可能なペースや上限値を決めていく。この計画に沿い、しっかりと稼ぐ。この稼いだキャッシュで国民生活を「適度に」豊かにし、次の産業や工業の創出にがっつりと投資を行う。資源枯渇させることなく、余力を持って、次の国を支える産業や工業へとシフトしていく。

 

A 次なる国を支えるメカニズムを定めるために、積極的に国の補助で諸外国への留学生を作り、次世代ナウルへの変貌を手伝う人財を育成する。ビジネスとしてグローバルな人財を後押しし、一定経験後に、次世代ナウル変貌にコミットしてもらう。潤沢なキャッシュがあっても、それで人財スペックが腐敗するようでは、未来はない。

 

B  儲かった国や企業が、人財への手当を厚くし表面上の豊かさを提供し続けるケースは想像しやすい。しかし、ここに落とし穴がある。人の、組織の力が衰退していく。即ち、安定な平常運転が当然となり、この状態で過不足ない豊かな環境に身を置くことができ、それに慣れてしまう。こうなると、臨戦態勢が必用な際にも平和ボケがなおらず、気が付いたとしても力がそもそも足りない状況になってしまう。

 

A 平穏な時、成功しているとき、うまくいっているとき。このような「良いとき」にこそ、次への飛翔であったり、重いトラブルなどを想定して果敢に投資すべきだ。戦時の経営では、市場自体の成長ではなく、生き残りをかけたシェア獲得に目がいく。さらなる飛翔にリソースを割いている場合ではない。よって、「良いとき」にこそ、現事業が他社に潰される未来への対応であったり、さらなる飛翔のための次の柱に対して「本気で」挑む必要がある。

 

B ここが難しい。平穏時に「本気で」臨むためには、臨場感が欠如してくる。心のどこかに「平気でしょ」と囁く自分が存在しがち。常に危機感を有する組織であったり、常に自分たちが世界を変革させる存在と疑わない組織として育て、深耕し、文化・風土というものを築き上げることが重要になる。ここは組織体含むマネジメントの真骨頂領域であり、CEOと幹部の構成が非常に重要になる。

 

A 国が企業が豊かになることで、社員の士気が下がる例は枚挙にいとまがないが、同時に、社員という人財が調子に乗るケースも多分に存在している。勢いのあるベンチャーが急成長を遂げる中で、社員の社外への態度が急激に悪化するケースが多い。相手を下に見たり、やたらと高圧的になったり、給与などの待遇の良さを見せつけるような仕草や服装、行動をする。これの怖いのは2つある。1つは、関係企業からの信頼を損なうということ。2つは、「自惚れ」社員の出来上がりである。うぬぼれにより、この先必要な実力が不足していき、組織が非効率化していくことになる。

 

B CEOと幹部のデザインはやはり重要であって、ここが核となり、一般社員という人財のもつ力をフル活用できる状態を作り上げ、その力を維持・成長させる土壌を整える必要がある。。特に幹部は、自分の仕事をやりやすくするのではなく、社員が働きやすく、彼らが成長していく環境を徹底的に整備することが求められる。ナウルの例は、当たり前のことほど難しく、当たり前のことにほど真摯に対峙する必要があるという好例である。