JK_Tomorrow-Maker’s blog

ビジネスや経済などのニュースや日常の気づきを出発点に、「科学(技術)、心(アート)、モノ(サービス)、デザイン」という4象限を操りながら、自由に発想していきます。発想や着眼の手助けや、思考の自由度拡大の糧になれば、何よりです。

「精神力が強そうな人」から

f:id:JK_Tomorrow-Maker:20181216155724j:plain----------
三点に注目したい 
 1.精神力を強くするための、Sense of Coherence
 2.「学ぶ」とは何か。「内容・プロセス・姿勢」×「行動」
 3.職場からストレスを除く…は方向性が逆である。

関連代表記事 日経新聞 2018/12/11 14:03
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38779930R11C18A2000000/
----------

A メンタルは非常に重要である。細かい定義は脇におくが、重要なのは、その「方向性」と「安定性」。そして、精神的にまいった状態に対して、精神力で乗り切る!という気合を注入するのは完全に間違っている。「メンタルを強くする」ことと「まいった精神を回復させる」ことは、切り分ける必要がある。


B 日本の場合、アメリカと異なり、例えば精神科に通院したり相談することに「負のイメージ」を持つ傾向が強い。恥ずべき点であり、隠れて対処すべき事項として位置付けられることが、まだまだ多いのかと思う。


A サイコロジストのカウンセリングを受けたり、或いはメンター等への相談…これらも「まいった精神をリカバーする」という面と「精神自体を強くする」という面の両面を持つ。


B 精神疾患の患者数は年々増加している。国内では、厚労省統計によると、H8年:218万人、H23年:320万人、H26年:390万人の精神疾患患者が存在している*1。うつ病といった言葉自体が波及したことも当然後押ししていると考えられるが、患者数の伸び率推移を捉えれば、時代背景を純粋に組んだ患者増があると考えて、妥当だろう。

 

A 精神科医の片田さんは、精神疾患患者増の理由を次のように分析している*2。

 

(要点抜粋)
 ◆社会と家族の両面に要因がある
 ・社会面:労働環境が劣悪化し、社員の心身が追い詰められる

 ・家族面:少子化の影響で、自己愛が増大。親からの期待が過度にかかり、親から投影された自己愛を背負って生きることにより、自分を過大評価しがちになる。

 

 これらの因子が負の循環を形成する。即ち、自己愛⇒自信過多⇒過酷な環境での不遇や挫折⇒自己愛を保守するために、他責的に振る舞う⇒心的負担が増す/蓄積される⇒ますます他責的になる…

 


B 自己愛のアンバランスさが根底にあるとすれば、このような方々に対して「精神力が足りない」とか「気合で乗り切れ」とか、「俺が若かった頃は…」というのは、全て逆効果であることが自然とわかる。


A 経営者として考えるのであれば、3要所への対策をデザインする必要がある。
 
 (1)社員がイキイキと働ける職場の形成
    ≠ストレスや精神的ダメージを軽減する仕組み
 (2)精神的にまいりつつある/まいった方々を回復させる仕組
 (3)社員の精神力を強める仕組
    ≠粗雑な扱いでも耐えられる人財の育成

 


B 多くあるのは「ストレスを減らす」という方向性だが、これは、現象を1つ1つ潰していく操作と類似しており、本質的ではない。経営でみれば、社員の能力を継続的にフル活用できる状態をつくる必要がある。そのためには、「社員が」働く環境に視点を置き、「社員が」どう過ごすかという視点で環境を整備する必要がある。


A 言うまでもないがそうするためには、管理とは別に、本当のマネジメントを上下に出来る人財が必用になる。このような面から、経営戦略とHR戦略を見直し、それと整合するように、HRMや組織構造を再整備しなおすのは、意義がある。


B 社員自身の精神力を強めることは重要であるが、勘違いしてはならないのは、精神力が高まるから「扱いは粗雑でいい」というわけではないということ。


A 超複雑系で高速に変動する世界に対して、しかもグローバルに活躍するのが前提であるビジネスフィールドに乗る以上、様々な精神的圧力がかかることは仕方がない。このような圧力を飲み込むことが可能で、その上で、上下をマネジメントできる精神力を持つ人財が重要になる。


B 宗教というものがある。国内日本人としていきていると、非常に疎遠であり、新興宗教=危険といった印象が強いのかと思う。しかし、グローバルフィールドでは宗教理解は必須であるし、そもそも、「宗教とは何か?」と考えるのは重要である。なぜ、宗教が全地球上に対してこれほどまでに広まったのか。


A 精神力が強い(と感じる)人と付き合ったり観察していると、「鈍感」「お見通し」「眼中にない」「予定の範囲」「図太い」…といった言葉とは別に、次のようなイメージが浮かんでくる。
  
  芯、らしさ、凛々しさ、軸、スタイル・・・等。

 


B SoC (Sense of Coherence)という言葉がある*3。日本語として首尾一貫性などと訳されるが、要は、「その人の感覚として筋が一本通っている状態」を意味する。Antonovskyさんの研究によれば、SoCは3つの感覚で構成され、「精神的に強そうな人」の共通項としてSoCがあるという。

 ◆SoC
  ①Comprehensibility
  ②Manageability
  ③・Meaningfulness

 


A SoCの三要素は、感覚として、私は理解しやすい。

 ◆SoC
 ①不具合が起きても、まー、起こるだろうと思っていたと『感じる』ことができて、②大きな課題に直面しても、まー、(自分がおれば)どうにかなるでしょと『感じる』ことができて、③やるからにはそこから全力で学びとってやる、と『感じる』ことができる状態。

 


B 精神力といった話題になると「感覚」が連発するため、伝達するのも/学ぶのも非常に難しい。天才が名コーチになれないのと同じ臭いがする分野である。


A 「感覚」を教えるのは非常に難しいが、そこに科学が入り込み、示唆を与えることには意味がある。SoCであれば、「芯、らしさ、凛々しさ、軸、スタイル・・・」というのは非常に重要であり、これらの言葉を使うことで、伝達効率が向上する。


B 世の中の議論で混同しているのは、学び方にあると思っている。それは、文学であっても、哲学であってもそう。文学を読んで「へー」とか、「うん、文書がキレイだった」で終わるのは、あまりに稚拙だし勿体ない。学ぶ際の向き合い方は、次の3項目に対して最適化する必要がある。
 
  1.内容そのもの
  2.考察プロセス
  3.その情報を発信した人が、その情報に対峙してきた姿勢

 


A 昔の古臭い文献の場合、「内容そのもの」は陳腐化していることが多い。しかし、例えば、「考察プロセス」であったり、「洞察を導く姿勢」からは、学ぶことが多かったりする。読みやすい文学書であっても、内容を吟味すれば「本当の正義とは何か」を問うているといったケースもある。


B 学び方というのは重要で、「(自分として)どうするか」とワンセットで成立する。ただただ自己啓発書などを読み漁る方もおられるが、「どうやって、自分をワンステップ上にあげるか」まで考え、それを「行動に移す」ことが、学びの本来のスタイルである。


A SoCに戻せば、「自分の軸をもつこと」という聞いたことのある帰結が待ち受ける。「これで終わりにする」人と、「自分はどうやって軸を持つべきか」「どうやって行動するか」まで考え動く人とでは、天と地の差がでる。


B 自分の中に一本の芯がある状態というのは、自分(の中の芯)という参照点を持つことを意味する。それが、太く強い軸心をもち成長するほど、外乱を吸収緩和し、深部まで汚染されることはなくなっていく。さすれば、SoCの三要素が自然となる。


A 自分の芯というKeyWordが、SoCという観点で見えてきたという事実がある。さて、(精神力を鍛えたいと思っている)あなたはどうするか?


B 私であれば2つの行動を起こす。1つは、精神力が強そうな人に注目し、SoCの観点で触れたり考察する。2つは、「自分とは?」という問いからスタートし、新しい環境に飛び込む行動をとる。


A 精神力が強そうだ感じる人に対して、SoCというキーワードを頭に導入し、観察し直すのは有意義である。そこから、「芯」というものに対する洞察が得られる。効果としては、直接会話をしたり、仕事をする機会を設ければ、より向上する。


B 明確な答えはないのだと思うが、自分の中に一本の芯を入れ込むためには、自分とは何ぞや?という問いに答えられる必要がある。自分の存在意義などを問う機会は減少しているのが、現状だろう。


A 豊かな自然の中で瞑想に暮れる。そんなことをする必要はない(この行動自体は価値があり面白いが…。)。多くの偏らない経験の中から、自分の芯を炙り出すことができると考えられる。重要なことは「偏在させないこと」。


B 相当な意識がないと、人間の行動は偏在化する。触れる人間や情報が限定され、自分の芯があるのかもわからなくなる。意識的に、自分が触れない世界へと思考を、身を投じることで、自分の価値や意義が徐々に浮き彫りになることは多いのではないか。


A 多くの分野で経験したり、多くの人と接触する方がいい…というのは、一般論だろう。種々分野での助言として語られることである。大事なことは、何を目的としてこれらの解(候補)に辿り着き、今後、具体的にどうやって行動するかだ。

 

 

*1 厚生労働省 専門的な情報 https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/index.html

 厚生労働省 患者調査 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html

*2 「正義」がゆがめられる時代、片田珠美、NHK出版新書

*3 Unraveling the mystery of health: How people manage stress and stay well, Antonovsky, Aaron、 http://psycnet.apa.org/record/1987-97506-000

 

/2018.12.16 JK