JK_Tomorrow-Maker’s blog

ビジネスや経済などのニュースや日常の気づきを出発点に、「科学(技術)、心(アート)、モノ(サービス)、デザイン」という4象限を操りながら、自由に発想していきます。発想や着眼の手助けや、思考の自由度拡大の糧になれば、何よりです。

「イタリア、EUに譲歩」から

f:id:JK_Tomorrow-Maker:20181218125407j:plain

----------
三点に注目したい 
 1.イタリアのEU離脱は許容不可能
 2.イタリアの位置付けと現政党在り方
 3.EUは爆弾を抱え続けている。

関連代表記事 Bloomberg 2018年12月17日 15:58 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-17/PJVBSB6JTSEP01
----------

A EUとイギリスの問題(Brexit)が大きく目立っているため、日本においては、EUとイタリア問題があまり目立たない。しかし、Brexitへと進むのが「まあ、仕方がない」で済まされるとしても、イタリアのEU離脱は許容不可能なリスクである。


B 動きとしては、EUからの制裁回避側にイタリアが動いた。イタリアが、財政赤字GDP(国内総生産)の2.04%に抑えるという調整をしたことになる。これにより、GDP比3%超の赤字を禁じているEUルールに、合わせこんだことになる。


A イギリスとイタリアは大きく異なる。特に、EU内への浸透度という点でみれば、イタリアが圧倒的に深く広く浸透している。また、イタリアはユーロ圏発足当初からのメンバーでもある。イギリスのような「気取った立ち位置」とは大きく異なり、イタリアはディープにEUに根差している。


B ブレグジットによりイギリスがいなくなるというのは、EUから見ると、EU域内で2番目の経済国を失うことを意味する。イタリアは現在で3番目の規模である。創立メンバーでもあり、主要経済国家でもある。このようなイタリアが自己主張を貫き通す、というのはEU統制の根幹が揺らぐ大問題である。


A 繰り返しになるがイタリアはEUに深く根差している。与党連合として強い反EU風潮があっても、やすやすと抜けることは出来ない。離脱したくても出来ないような状況ともいえる。今後も居続けると考えられる主要経済国兼創立国が、「我儘」を貫き通す場合、EU内にある各種不満が一気に噴出する可能性が高まる。


B 冷静に歴史を振り返ると、EUはイタリアに対GDP比で3%を超える財政赤字を許してきている*1。フランスやスペインに対するEUの態度も踏まえれば、単に、GDP比3%を超える赤字予算に対して、EUが反論してきたのではない、とよめる。

 

A 与党連合を形成する、M5Sと同盟の主張が問題であると考えられる。M5S(五つ星運動)は左派系ポピュリスト政党であり、ルイジ・ディマイオさんが率いる。同盟は、ビジネスに立脚した国家主義を打ち出す政党であり、マッテオサルビーニさんが率いている。


B 面白いのは、M5Sでは貧困層へのUBI(ユニバーサルベーシックインカム)導入を、同盟では減税を公約していること。まとまりがない。しかし、共通しているのは、M5Sはポピュリズムをベースに、同盟はビジネス性をベースに主張を作り、反EUの立場をとっているということ。EU離脱、ユーロ離脱、或いは、EU内での特別措置(規制緩和など)を目指している。

 

A EUは統制規律を重んじブリュッセルがすべてを支配する機構になっている。官僚組織であり、これを窮屈に感じる国々が増え、実際にデメリットの方が大きいような国も現れている。

 

B イタリアとしては緊縮財政という足枷がある以上、今までの延長線上からは離脱できないと考えているのだろう。緊縮財政から解放され、国民やビジネスの為の新しいアプローチを採ることが、イタリア成長に対するカンフル剤であると考えていると思われる。

 

A  状況を整理すれば、「今後も居残り続ける」「主要経済国であり」「EU創設メンバーでもある」イタリアが、与党連合として「反EUという立場」で規制緩和や特例を主張するような行動をおこし、これをEUが認めるということは、官僚組織として統治してきたEU組織体の土台にヒビが入る可能性が高いことを意味する。これをトリガーに、EUに対して蓄積された不満が行動として噴出すれば、もう止めることはできない。よって、EUはイタリアのGDP比3%をちょっと超えるような赤字予算に対して、厳しく目を光らせ、反対姿勢をとってきているのかと思われる。

 

B 今回イタリアが譲歩した。しかし、ポピュリズムとビジネス性の観点で思考し行動する与党連合であることは変わっていない。重要なことは、今回のイタリアの行動に対するEUのリアクションという経験を積んだことではないだろうか。より自由にはばたく欲求というのは抑えられない。今回の経験をもとに、次回はより練られた主張を繰り出すのではないか。


A EU側に視点をうつすと、爆弾を抱え続けた状態、であることには、何ら変化が起こっていないといえる。

 

*1 世界のネタ帳 http://ecodb.net/country/IT/

 

/2018.12.18 JK